最新医療情報13
20110314~
善意のお金はどこへ 個人や団体、医療支援も
2011年3月24日 提供:共同通信社
東日本大震災の被災者の生活再建に役立てば、とさまざまな寄付活動が全国に広がっている。集まった善意は、どのようにして被災者まで届くのか。
日本赤十字社によると、20日までに入金が確認できた義援金は223億円を超えた。阪神大震災では発生後2週間で約164億円が集まったが、今回はそれを大きく上回る勢い。集まった義援金は、内部の委員会で検討し、「お見舞金」として被災した個人に配分される見込みだ。
「赤い羽根募金」で知られる中央共同募金会は、赤十字などと同じ義援金に加えて、災害ボランティアやNPOを支援する寄付を呼び掛けている。活動内容などから同会が選んだ団体に資金の一部を援助する仕組みだ。
芸能人やアスリートがインターネット上で募金を呼び掛ける動きも活発だ。タレントの伊藤英明(いとう・ひであき)さんや、プロゴルファーの有村智恵(ありむら・ちえ)選手らが参加する「シビックフォース」を通じて募金すると、被災地へ送る物資の購入費用などに充てられる。シビックフォースは「今後は必要な物資が変わる。大工道具などニーズに合わせた支援を続けていきたい」としている。
医療のサポートに特化した寄付もある。「国境なき医師団」は市民から寄せられた寄付金を薬や医療機器の購入や輸送、医師の派遣費用などに充てている。今も10人以上の医師が被災地で奮闘中だ。
自然災害の寄付金は、発生当初に多額のお金が集まるものの、それが長続きしないことが多いようだ。自立復興支援の活動を続けている「ピースウィンズ・ジャパン」は「活動内容を理解して賛同いただけたら、ぜひ継続的な支援を」と訴えている。
「自然災害に無力感」 被災地で検視の医師
2011年3月24日 提供:共同通信社
東日本大震災で遺体の検視のため宮城県に派遣された堺市医師会の河野朗久(こうの・あきひさ)医師(49)が23日、堺市に戻り「自然災害の恐ろしさを目の当たりにして無力さを感じた」と記者団に振り返った。
日本医師会の要請で15日に現地入りした河野さんは、宮城県利府町の総合施設で2日間、警察官や歯科医師と協力して約100体を検視した。
手をつないだままの幼い兄弟や、赤ん坊を守るように抱きしめていた母親の遺体もあった。「一瞬にして津波が町を破壊し、人々の日常生活を奪ったのではないか」と、河野氏は語る。
死因は津波被害による溺死か全身の多発外傷が大半。個人を特定する手掛かりが乏しく、阪神大震災のときより身元確認は難航しているという。
津波肺…一命取り留めた人を悩ます
2011年3月24日 提供:読売新聞
東日本巨大地震で被災し医療機関に運ばれた患者で目立ったのが、野外の寒い環境に長時間さらされて起きる「低体温症」だ。
国立病院機構仙台医療センターで地震発生翌日の12日朝から救命治療にあたった東京医科歯科大の大友康裕教授(救急災害医学)によると、1日100人弱の患者が運ばれてきたが、頸椎(けいつい)損傷や、車中で眠ったことから足にできた血栓(血の塊)が肺の血管に詰まる肺塞栓を起こして心肺停止状態になったなどの重症患者は7-8人程度。残りのほとんどは低体温症だった。「阪神大震災の時は倒壊した建物の下敷きになり重傷を負った人が多かったが、今回、津波にさらわれた人の多くは亡くなってしまった」と話す。
津波から一命を取り留めても「津波肺」という重い肺炎を起こす人もいた。おぼれた時に肺に入った海水に含まれる汚染物質で炎症を起こしたのだ。福島県内で救急治療にあたった日本医大の横田裕行・高度救命救急センター部長は「救出され、入院先でほっとしたところで、急に肺炎を悪化させた患者がみられた。退院して帰宅後に発症し、集中治療が必要になった患者もいた」と指摘する。
同じ悩み思いやる 人工肛門の避難女性
2011年3月24日 提供:共同通信社
「下痢をすると漏れるんじゃないか、臭うんじゃないかと気になって眠れないんです」。岩手県陸前高田市の高田一中体育館に避難している矢作美保(やはぎ・みほ)さん(63)は人工肛門の悩みと戦いながらの生活が続く。「私と同じでなくても特殊な事情のある人は、恥ずかしかったり分かってもらえないと思って耐えているかもしれない」と思いやる。
6年前に直腸の手術を受け、人工肛門からの排せつ物をためる袋(パウチ)を脇腹に付けるようになった。津波で自宅は倒壊し、一目散に逃げたため、パウチの替えがないまま避難生活に。
5日目に同県大船渡市の病院から3袋をもらった。普段はパウチを洗って使えるが、仮設トイレの順番待ちの列や便器周辺を汚すのを気にして、それもできない。
パウチを長持ちさせるため、食事は配られた半分しか食べない。飲み物は冷たければ下痢をし、温かいと腸が活発化するので十分飲めず、体力は落ちていった。
20日朝、人工肛門の周りが真っ赤なのを見て最後の一枚に変えた。「パウチは私の命の糧。もうおしまいと思った」。その日、赤十字の職員が「3枚手に入った」と持ってきた。窮状を聞き付けた県内の男性から提供の申し出もあった。いずれの知らせにも号泣した。
「声を上げれば誰かが助けてくれる。こんなありがたいことはない」。ほおを伝わる涙をぬぐった。
人工肛門保有者らでつくる日本オストミー協会によると、保有者は人口の約0・1%とみられ、高齢者ほどその割合が高くなるという。
避難住民3割弱に血栓 宮城で医師が簡易検査
2011年3月24日 提供:共同通信社
被災地でのエコノミークラス症候群の研究をしている新潟大大学院助教の榛沢和彦(はんざわ・かずひこ)医師が、東日本大震災で大きな被害が出た宮城県内の三つの避難所で被災者39人を簡易検査した結果、約28%にあたる11人に同症候群につながる血栓が見つかっていたことが24日、分かった。
榛沢医師は「血栓は水分不足や身動きが取りづらい環境でできやすい。大変な状況が続くが、雑魚寝をしないような環境整備が必要。車中に泊まるのもやめたほうがいい」としている。
榛沢医師によると、検査は19日と20日に、宮城県の石巻市、登米市、南三陸町の避難所で実施。足にむくみがある人のほか、長時間横になっていたり、車中泊を3泊以上続けたりした37~81歳の39人をエコー(超音波診断)装置で調べた。
その結果、足の静脈に血栓が見つかったのは11人に上り、平均年齢は67・2歳。特に車中泊をしていた8人のうち、4人に見つかった。
同症候群は長時間、同じ姿勢で座り続けるなどして静脈に血栓ができる症状。流れた血栓が肺で詰まり死亡するケースもある。水分摂取と適度な運動などで予防できるとされる。
新潟県中越地震などの被災地を見てきた榛沢医師は「今回は福島原発の事故を受けて外に出ず、運動不足の人もいる。トイレの設備が不十分な避難所もあるが、水分を取らないと危険なので改善してほしい」と話す。
警察庁によると、23日時点で、東北や関東地方などに設けられた約1800カ所の避難所には、原発事故の影響などによる避難を含め20万人以上が暮らしており、健康管理が課題になっている。
避難の住民も窓口負担免除 治療費、原発事故受け
2011年3月24日 提供:共同通信社
厚生労働省は23日、東日本大震災の被災者に対して治療費の窓口負担を猶予、免除する措置について、福島第1原発の事故で避難や屋内退避の対象となった住民にも拡大することを決め、都道府県などに通知した。
健康保険証がなくても氏名などを申告すれば、保険扱いで治療を受けられる。その際の窓口負担や入院時の食費の支払いについても、自治体などの判断で免除される。
住居が全半壊したり、生計を維持する家族が死亡するなどしたりした被災者は、既に免除などの対象となっている。
東京の水道水から検出 乳児基準超えるヨウ素 「大人は健康影響なし」 厚労相、買い占め警告
2011年3月24日 提供:共同通信社
東京都は23日、都水道局の金町浄水場(葛飾区)で、水道水1キログラム当たり210ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたと発表した。福島第1原発事故の影響とみられ、乳児の基準値100ベクレルを超えているとして、乳児が飲むのを控えるよう求めた。検出されたのは22日の検査。乳児以外の基準300ベクレルは下回っている。
300ベクレルは、国の原子力安全委員会が定めた基準。乳児については「発達途上で甲状腺にヨウ素が取り込まれやすい」として食品衛生法に基づき厳しくしている。
細川律夫厚生労働相は、ヨウ素検出の発表後に都内でペットボトルの水が買い占められているとして「大人が飲む分には健康に影響はない。乳児に優先的に渡るよう協力を」と警告した。
東京都も「基準は長期間摂取した場合の健康への影響を考慮したもので、代替の飲用水が確保できない場合は飲んでも差し支えない」と説明。一方で、550ミリリットル入りペットボトルの水24万本を乳児がいる家庭に提供することを決めた。
農林水産省は、全国清涼飲料工業会にミネラルウオーターの増産を要請した。
金町浄水場の原発からの距離は約210キロ。都によると、対象地域は東京23区と武蔵野、三鷹、町田、多摩、稲城の5市の全域で人口は約982万5千人、うち乳児は約8万人。
これまで福島県内でも100ベクレルを超えるヨウ素が水道水から検出されており、飯館村では20日に965ベクレルが出た。厚労省は既に住民に対し飲まないよう求めている。
22日に3カ所の浄水場で検査。小作浄水場(羽村市)は32ベクレル、朝霞浄水場(埼玉県朝霞市)では検出されなかった。
23日の検査でも金町浄水場で190ベクレルの放射性ヨウ素が検出された。小作、朝霞の2カ所は検出されなかった。
24日の時点で、基準量以下になる。
原発作業員に死の危険 仏専門家、増援呼び掛け
2011年3月24日 提供:共同通信社
【パリ共同】福島第1原発の事故で、フランス・パリ大学のポール・ジョバン准教授(日本社会学)は24日付ルモンド紙のインタビューで、強い放射線にさらされながら事故現場に踏みとどまり、電源復旧などに取り組む作業員らに「死の危険」が迫っているとして、交代要員の派遣など増援が必要だと呼び掛けた。
同准教授は「少なくとも外部から応援の作業員を呼び寄せて、緊急に(1人当たりの放射線)被ばく量を減らす必要がある」とし、少人数の技術者や作業員に依存する態勢に異議を唱えた。
また「日本の放射線防護政策は、何より原子力産業の保護を優先する」として、原発作業員が白血病などを発症しても、めったに労災と認定されないと批判。
厚生労働省が今回の事故対策に限り、被ばく線量の上限を250ミリシーベルトまで引き上げたことについて「この緊急措置は、作業員が死亡することになっても(東京電力が)補償請求を免れるための方便である可能性がある」と指弾した。
同准教授は、原発を含む日本の労働現場を研究対象としてきた日本専門家で、東京で同紙のインタビューを受けた。
飯館村の雑草265万ベクレル 野菜を大幅に上回る
2011年3月24日 提供:共同通信社
文部科学省は24日、福島県内で採取した雑草から検出した放射性物質の調査結果をまとめ、福島第1原発の北西約40キロの飯館村で20日に採取した雑草の葉から1キログラム当たりヨウ素254万ベクレル、セシウム265万ベクレルを検出したと発表した。
食品衛生法で定められた暫定基準値は、ヨウ素が1キログラム当たり2千ベクレル、セシウムが同500ベクレル。厚生労働省によると、飯館村で採取された野菜からは1キログラム当たりヨウ素1万7千ベクレル、セシウム1万3900ベクレルが検出されたものもあるが、雑草からの検出量はこれを大幅に上回る。厚労省は「極めて高い検出量で、農産物への影響について厳しく監視していく」としている。
文科省の発表によると、原発から約25~45キロの複数地点で18日から21日に採取した雑草の葉から1キログラム当たりヨウ素3万6千~254万ベクレル、セシウム1万100~265万ベクレルを検出した。
飯館村では、20日に採取した土壌からも土1キログラム当たりヨウ素117万ベクレル、セシウム16万3千ベクレルが検出された。
揺らぐ「食の安全」 忍び寄る風評被害 「表層深層」農産物「摂取制限」
2011年3月24日 提供:共同通信社
農産物から検出された放射性物質の濃度が跳ね上がった。政府は、現時点では健康に影響を及ぼさないとしながらも、初の「摂取制限」を発動。産地から悲鳴が上がる中、東京都も基準を超えたとして水道水を赤ちゃんの粉ミルクに使わないよう求めた。食の安全が大きく揺らぎ、風評被害も忍び寄る。
▽官邸に缶詰め
「念のために指示を出した」。枝野幸男官房長官は23日の記者会見で、「摂取制限」について、こう強調した。
22日夜。首相官邸に厚生労働省の担当者が呼び込まれた。福島県産の野菜から暫定基準値を大幅に超える放射性物質が新たに検出されたとの発表文案をめぐる調整。どうすれば国民に過度の不安を与えないで知らせることができるか-。
「『摂取を見合わせていただきたい』という表現でいいのか」。官邸側のチェックは厳しかった。担当者は官邸にそのまま"缶詰め"となり、発表は日をまたいで23日午前になった。
厚労省幹部は「食の安全を守るという立場から、摂取制限に反対はない。ただ、発表文の表現一つで風評被害につながる可能性もあり、最大限、気を使わざるを得ない」と疲れ切った表情で話した。
▽資料出せず
だが、政府が物差しにしている基準は突貫工事でつくった「暫定版」。厚労省が原発事故を受け急ごしらえで設定した。本来基準を定める食品安全委員会が作業を始めたのは22日からだ。
委員会の初会合で委員らは、食品の育った土壌や水、原発周辺の環境データを要求したが、厚労省の担当者は「飲料水は別の部署が調査を担当しており、畑の水は環境省の所管で資料がない」「原発周辺のデータは経済産業省で」と回答に詰まった。
放射性物質の濃度は予想以上だった。23日未明まで及んだ専門家を交えた政府の対策会議では、福島県産の野菜を、すべて出荷停止する案まで一時検討されたという。関係者は「摂取制限」について「家庭の冷蔵庫の中までのぞくような政策は相当なこと」と表情をこわばらせた。
▽悔しい
福島市の農業板垣清一(いたがき・せいいち)さん(63)は、ホウレンソウ約1千束(約10万円分)をコンテナに入れていたが出荷できなくなった。「災害で亡くなっている人を考えると物を言える立場じゃないが、仕事を達成できないことが悔しい。至極残念」と肩を落とした。
「毎日搾った牛乳を捨てている。寝て起きるたびに赤字だ。サラリーマンなら月給を捨てているようなもの。早く補償してほしい」。福島県二本松市で酪農を営む武藤信一さん(58)も、やり切れない表情だ。
「洗濯や野菜を洗うのはどうか」。水道水から乳児の摂取基準を超える放射性物質が検出された東京都には、問い合わせが相次いだ。
担当者は「基準は長期間摂取した場合の影響を考慮したもの。代わりの水が確保できない場合は使っても差し支えない」と繰り返し強調した。
石原慎太郎知事は「今後も継続して検査結果を公表していく。都民の皆さまには水の使い方を冷静に行ってほしい」と神妙に呼び掛けた。
花粉を放射性物質だと…気象庁に問い合わせ殺到
2011年3月24日 提供:読売新聞
気象庁によると、24日午前、同庁の天気相談所に「地面に黄色い粉がたまっている」「放射性物質ではないか」などといった問い合わせが、200件以上殺到した。
状況から同庁はスギ花粉とみているが、「こんな相談が殺到したのは初めて」と驚いている。
黄色い粉に関する問い合わせは主に東京、埼玉、千葉、茨城などの住民らから寄せられた。同庁によると、関東地方では23日、スギ花粉の飛散量が多く、同日夜から24日未明にかけて弱い雨が降ったといい、同相談所は「雨が花粉を含んで落ち、花粉だけが地面や車、ベランダなどに残ったのではないか」とみている。放射線量の検査を行っている文部科学省は「放射性物質が黄色い粉となって落ちてくることはない」としている。また、千葉県が船橋市内などで黄色い粉を採取して顕微鏡で調べた結果、スギ花粉だったことを確認したという。
3号機地下で作業中3人被ばく、2人は病院搬送
2011年3月24日 提供:読売新聞
東京電力福島第一原子力発電所3号機のタービン建屋地下1階付近で24日午後0時9分ごろ、淡水注入用のケーブル敷設を行っていた作業員3人が被曝(ひばく)した。
経済産業省原子力安全・保安院が発表した。
被曝線量は約170-約180ミリ・シーベルト。現場付近は津波による海水や放水で浸水しており、3人はその水につかって作業をしていた。
3人のうち、足の皮膚に放射性物質が付いた協力会社の社員2人が、福島県立医大に搬送された。この後、放射線医学総合研究所(千葉市)に移送される見通し。
イレッサ、国にも賠償命令 「副作用の記載指導せず」 2遺族に1760万円 東京地裁
2011年3月24日 提供:共同通信社
肺がん治療薬「イレッサ」に重大な副作用の危険があることを知りながら適切な対応を怠ったとして、患者3人の遺族計4人が国と輸入販売会社アストラゼネカ(大阪市)に計7700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は23日、患者2人の遺族2人に計1760万円を支払うよう両者に命じた。
松並重雄(まつなみ・しげお)裁判長は、厚生労働相に行政指導の権限不行使があり、国家賠償法上の違法があると認定した。イレッサ訴訟で2月の大阪地裁判決はアストラゼネカの賠償責任しか認めておらず、国への賠償命令は初めて。
判決理由で松並裁判長は、行政指導は厚労相の「責務」とした上で「(2002年7月の)輸入承認当時、副作用の間質性肺炎が致死的となる可能性があることを添付文書に記載するようアストラゼネカに指導しなかった」と指摘。「ほかに安全性確保のための十分な措置が講じられた事情もない」と述べ、対応は違法だったとした。
アストラゼネカに対しても「医師などへの情報提供が不十分で、イレッサは安全性を欠いていた」と賠償責任を認めた。
その上で02年10月15日に「緊急安全性情報」が出る前に服用を始めた患者2人について「添付文書に致死的となる可能性が記載されていれば、服用を始めて継続することはなく、間質性肺炎で死亡することはなかった」と判断した。
原告・弁護団は記者会見し「国の責任を認めた画期的な判決。高く評価したい」と話した。細川律夫厚労相は「厳しい判決。今後の対応は関係省庁と協議して決めたい」との談話を発表。アストラゼネカは控訴を検討している。
大阪地裁判決は「承認時の行政指導は万全ではなかったが、著しく不合理だったとまではいえない」と国の責任を否定。アストラゼネカと原告が控訴した。
両地裁は今年1月、「国と企業は患者や遺族を救済する責任がある」と和解を勧告したが、被告側は拒否した。
※イレッサ
英国アストラゼネカが開発した肺がん治療薬。がん細胞の特定分子だけを攻撃するため、副作用が少ない「夢の新薬」として期待され2002年7月、世界に先駆け日本で承認された。特定の遺伝子変異を持つ患者に効果があるとされ、年間約9千人が新たに投与を受ける一方、呼吸困難になる「間質性肺炎」などでこれまで800人を超える副作用の死亡例が報告されている。
私は、死亡する副作用が出る医薬品が認められていること自体、信じられません。
イレッサ訴訟の判決要旨
2011年3月24日 提供:共同通信社
肺がん治療薬「イレッサ」をめぐり、国とアストラゼネカに損害賠償を命じた23日の東京地裁判決の要旨は次の通り。
【国の責任】
イレッサは、輸入承認前の治験では副作用が概して軽く、国内臨床試験でも重篤な副作用として間質性肺炎の発現が見られたが、他の抗がん剤と比べて発症頻度や重篤性が特に高いとの根拠はなく有用性を肯定できた。厚生労働相によるイレッサの承認は、国家賠償法上、違法とはいえない。
国は承認前に、イレッサの副作用が致死的となる可能性があると認識していた。厚労相は添付文書に医薬品の安全性確保のために必要な記載がされているか審査し、行政指導を行う権限と責務がある。必要な記載が欠けているのに権限を行使しなかったときは特段の事情がない限り、国家賠償法上、違法となる。
(2002年7月の)添付文書第1版の記載では、イレッサによる薬剤性間質性肺炎が致死的となる可能性があることまで一般の医師が認識することは困難だった。
従って、厚労相は承認に当たり、アストラゼネカに対し、副作用として間質性肺炎が発症することを添付文書に記載するか、ほかの副作用よりも前の方に記載し、かつ致死性となる可能性を記載するよう行政指導するべきだった。厚労相がこうした権限を行使しなかったのは違法だ。
【アストラゼネカの責任】
イレッサは現在の知見では、一部の患者に高い効能、効果があると認められる。間質性肺炎は従来の抗がん剤の3倍強の割合で発症することなどが明らかになったが、患者への投与が慎重に行われるようになった結果、死亡の割合は少なくとも従来の抗がん剤と同程度になっている。効能に比べて著しい有害性は認められず、設計上の欠陥があるとはいえない。
第1版の記載は、間質性肺炎の副作用に関する安全性確保のための情報提供として不十分なもので、イレッサには指示・警告の上で欠陥があり、製造物責任法上、通常の安全性を欠く状態だった。(02年10月の)第3版は十分な情報提供がされており、欠陥はない。
【因果関係】
死亡患者のうち2人は、副作用の間質性肺炎について、添付文書に致死的となる可能性があることが記載されていれば、服用を始めて継続することはなく、間質性肺炎で死亡することはなかったと認められる。
【結論】
国は、厚労相が添付文書に副作用の間質性肺炎が致死的となる可能性があることを記載するようアストラゼネカに行政指導しなかったことについて、2人に国家賠償法に基づく賠償責任を負う。アストラゼネカは販売開始当時、間質性肺炎が致死的となる可能性があることなどを記載せず製造物の欠陥を有していたことについて、2人に製造物責任法に基づく賠償責任を負う。
残りの死亡患者1人は、服用を始めた当時、既に添付文書に間質性肺炎が致死的となり得ることが記載されており、両者は賠償責任を負わない。
遺体未発見でも死亡保険金…被災者に特例措置
2011年3月24日 提供:読売新聞
生命保険各社は、東日本巨大地震で被災して行方がわからず、死亡したとみられる場合、死亡保険金を支払う方針を固めた。
行方不明者は1万6000人超に上っており、遺体が見つからないケースも予想されるためだ。生保業界は、死亡診断書などがなくても保険金の支払いに応じる異例の措置をとり、残された被災者らの生活再建を支援する考えだ。
具体的には、地震や津波での被災が確実視され、公的機関が事実上、死亡を認定する証明書があれば、戸籍の抹消を待たずに死亡保険金を支払う方針だ。死亡保険金の支払いには、通常、病院で発行される死亡診断書などの書類が必要になる。しかし、生保各社は被災者の事情を考慮する必要があると判断した。
1995年の阪神大震災では、生保会社による保険金の支払総額は483億円だったが、今回はこれを大幅に上回り、過去最大規模になる見通しだ。
また、生命保険協会は、契約者の名前や生年月日などの個人情報がわかれば加入の有無を照会できる「被災者契約照会制度(仮称)」を4月にも創設する。
30キロ圏外でも100ミリシーベルト 「避難や退避不要」 放射性ヨウ素の拡散試算 終日屋外、1歳児前提に
2011年3月24日 提供:共同通信社
枝野幸男官房長官は23日の記者会見で、福島第1原発を中心にした放射性ヨウ素による被ばく線量について、屋内退避の範囲である30キロ圏の外側の一部地域でも「100ミリシーベルト以上の被ばく線量となりうるケースがある」との試算結果を明らかにした。
原子力安全委員会の班目春樹(まだらめ・はるき)委員長によると、地震発生の翌日の12日午前6時から24日午前0時まで、1歳児が一日中ずっと屋外にいたと仮定し、甲状腺に放射性ヨウ素が取り込まれて被ばくする線量を推定した。屋内では屋外の4分の1から10分の1に低減される。より年長の子どもや大人への影響はもっと少ないという。
放射性物質の拡散についての試算を公表したのは初めて。枝野長官は「直ちに避難や屋内退避をしなければならない状況とは分析していない」と述べた。その上で「念のため、所在場所が原発の風下に当たる場合には、できるだけ窓を閉め、密閉した屋内にとどまることを勧めたい」と注意喚起した。
安全委員会は100ミリシーベルトの被ばく線量について、「退避の際に予防的にヨウ素剤を服用したほうがいいレベルだが、甲状腺疾患への影響は心配ない水準」としている。
100ミリシーベルトを超える範囲は、北西方向に約50キロの福島県伊達市南部や、南南西方向に約40キロのいわき市の東部にまで広がり、ほかに南相馬市、飯館村、川俣町、浪江町、葛尾村、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町の一部が含まれた。
班目委員長は記者会見で「非常に保守的な厳しい条件の結果で、ある種の傾向を示しているが、参考材料だ。現段階では余裕があり、直ちに対策は必要ない」と話した。
試算したシステムは、文部科学省が運用を委託する原子力安全技術センター(東京)に設置した「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」。
大気中の放射性物質の測定値と、これまでの気象情報を踏まえて、放射性ヨウ素による甲状腺の被ばく量を推計した。
※迅速放射能予測システム
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI) 原発周辺で、放射性物質の広がり方や被ばく線量を予測するシステム。風向きや風速、降水量などの気象データのほか、事故時の放射性物質の放出継続時間、放出量、対象地域の地形などのデータを使って試算する。1979年の米スリーマイルアイランド原発事故を受け、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)が開発。普段は各地の原発などを常に監視している。
※ベクレルとシーベルト
ベクレルは、放射線を出す能力を示す放射能の強さや量を表す単位。これに対し、シーベルトは人間が放射線を浴びたときの影響を表す単位。放射性物質が出す放射線にはさまざまな種類があり、種類や物質からの距離によって影響は異なる。電球に例えると、光の強さそのものに相当するのがベクレルで、距離によって異なる明るさに相当するのがシーベルトと説明されることもある。
金町浄水場で放射性物質…乳児には飲ませないで
2011年3月23日 提供:読売新聞
東京都は23日、都内に水道水を供給する浄水場から、乳児が飲む規制値の2倍を超える放射性ヨウ素を検出したと発表した。
都は、乳児が水道水を飲むことを控えるよう呼びかけている。
呼びかけの対象地域は東京23区、武蔵野市、町田市、多摩市、稲城市、三鷹市。
検出されたのは、葛飾区の金町浄水場で、22日午前9時に採水したところ、210ベクレルを検出した。食品衛生法に基づく乳児の飲用に関する暫定的な規制値は100ベクレルとなっている。
都では、この水道水を乳児の粉ミルクなどに使うことを控えるよう呼びかけている。ただ、指標は乳児が長期にわたり飲み続けた場合を想定しており、他の飲用水が確保できない場合は飲んでも構わないとしている。
活性炭に通せば、放射性ヨウ素は、吸着されて、除去できます。
なんでもっと事前に国は対策しないのですかね。浄水場に活性炭でろ過しろと指示していればこんな騒ぎにならないのに。
放医研に問い合わせ殺到 「過剰な心配は不要」
2011年3月23日 提供:共同通信社
放射線医学総合研究所(千葉市)は22日、放射線被ばくに関して21日までに約2300件の問い合わせがあったことを明らかにした。「不安が広がっているが、これまでの研究所の検査で健康上問題のある汚染は出ていない。過剰に心配する必要はない」と冷静な対応を呼び掛けている。
研究所によると、放射線や被ばくの基礎情報をホームページに掲載し、13日からは電話での問い合わせ受け付けも始めた。電話は増え続け、18日に約420件に上った。
政府が福島県のホウレンソウなどの出荷停止を指示した21日は食品に関する質問が相次いだ。妊婦から「被ばくした可能性があるとして、医師に中絶を勧められた」という相談も寄せられており「健康上、問題はない」という正確な情報を一部医師が把握していない恐れもあるとしている。
研究所は22日までに、東京電力関係者や原発の周辺住民ら計377人を検査、被ばく線量を計測した。
身元確認に国際基準を 検視の法医学者が訴え
2011年3月23日 提供:共同通信社
東日本大震災の犠牲者の身元確認でミスを防ぐため、現在の手法より厳密とされる国際基準「DVI(災害犠牲者身元確認)」を採用すべきだとの声が法医学者から出ている。指紋や歯型だけでなく、目や耳の形、着衣など数百項目の生前情報と照合するため、遺体の損傷に伴い難航が予想される身元確認作業に有効という。
岩手県で検視活動に当たる岩手医大の出羽厚二(でわ・こうじ)教授によると、現地では犠牲者の多さに加え、車やガソリン、通信手段の不足も重なり身元確認が難航。警察庁は各都道府県ごとに異なる検視の簡素化を通知したが、全国から駆け付けた医師の間に混乱があるという。
遺体が身元不明の場合、現場の医師らはこれまで迅速な対応を優先、所持品や指紋、歯型、DNAなど最低限の試料を保存して確認の際に備えているが、出羽教授は「身元確認は時間とともに難しくなる。今後はDVIが必要だ」と訴える。
DVIは国際刑事警察機構(ICPO)が提唱し米、英など約20カ国が採用。2月のニュージーランド地震でも使われた。数百項目にわたる照合結果は、最終的に裁判官らが客観的に判断する。
遺族の目視による確認は「間違いの元」として認めない。時間と手間がかかるのが難点だが、国籍の違う犠牲者が多数出た場合も対応できる。
2004年スマトラ沖地震の発生から約2週間後にインドネシア当局がDVI方式で身元確認をやり直したことを挙げ、東京医科歯科大の中久木康一(なかくき・こういち)助教も同方式の早急な導入を要請。
出羽教授は「日本では厳密な死因究明や遺体の身元確認がなおざりにされてきた」とし、DVIに加え法医学者や検視官の増員も求めている。
「20キロ圏外は安全」と専門家 年間100ミリシーベルトには注意
2011年3月23日 提供:共同通信社
東京電力福島第1原発の事故を受け、被ばく医療を専門とする長崎大の山下俊一(やました・しゅんいち)教授が22日、東京都内で記者会見し「現状では原発から(避難指示区域の)20キロ離れていれば安全。健康への影響を心配する必要はない」と話し、過度に不安にならないよう呼び掛けた。
放射線が体に与える影響について「被ばく量が年間100ミリシーベルト以上だと、がんの発生リスクが高まる。低いレベルなら被ばくでDNAが傷ついても修復できるが、高いと修復できないものが出てくる」と注意した。
山下教授は1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故で被ばくした患者を診察し、このたび福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーに就任した。
チェルノブイリでは情報が少ない中、住民が汚染された飲食物を摂取し、子どもの甲状腺がんが増えたことを紹介。「放射性物質の種類によって健康への影響は異なる。種類ごとに詳しい測定データを出すことが重要」と述べた。甲状腺がんの要因となる放射性ヨウ素が一部の原乳やホウレンソウなどで検出されており、今後もデータを注視するという。
放射性物質が検出された食品について「該当地域の食品は流通していない。モニタリング(監視)が重要だが、該当地域でも安全な食品もあり、過剰に心配する必要はない」と話した。
ただ福島県の一部地域では毎時100マイクロシーベルト級の比較的高い放射線量が継続的に観測され、山下教授は「気象や地理的な条件で局所的に高くなったのだろう。全体としては安全だが、該当地域の人は可能なら避難したり、その場所でとれたものを食べるのは控えたりした方がいい」と語った。
放射性物質の拡散予測公表せず、批判の声
2011年3月23日 提供:読売新聞
福島第一原発の事故で、文部科学省が行った放射性物質の拡散予測の結果が公表されていないことに、専門家から批判が上がっている。
今回のような事故を想定して開発されたシステムだが、「生データを公表すれば誤解を招く」として明らかにされていない。
このシステムは「SPEEDI(スピーディ)」と呼ばれ、炉心溶融に至った1979年の米スリーマイル島の原発事故を踏まえ、開発が始まった。現在も改良が進められ、2010年度予算には7億8000万円が計上された。
コンピューターで原発周辺の地形を再現し、事故時の気象条件なども考慮して、精密に放射性物質の拡散を予測する。今回の事故でも、原発内の放射性物質が広範囲に放出された場合を計算。政府が避難指示の範囲を半径20キロ・メートルに決める時の判断材料の一つとなった。
住田健二・大阪大学名誉教授は「拡散予測の結果を含め、専門家が広く議論し、国民が納得できる対策をとれるよう、情報を公開すべきだ」と批判する。
「内部被ばく」に留意を 原爆調査の専門家
2011年3月23日 提供:共同通信社
福島第1原発の事故で、周辺住民は避難を強いられ、水道水や農作物からは放射性物質が検出された。広島・長崎の被爆者調査に詳しい専門家は、体内に入り込む放射性物質による「内部被ばく」に留意してほしいと呼び掛けている。
食べ物や呼吸を通して放射性物質を取り込み、体内から放射線を浴びるのが内部被ばく。身体の表面に付いた場合と違い、洗い流すことができない。
少しずつ排出されるものの、長期間放射線にさらされるため危険性は高く、広島大の鎌田七男(かまだ・ななお)名誉教授(放射線生物学)は「被ばく線量をエックス線検査などと単純に比較するのは適切ではない」と指摘する。
内部被ばくを抑える方法は外出や換気をなるべく避け、外に置いてあったり、汚染の可能性がある食品は食べないこと。特に妊婦や子どもは注意が必要だ。
これまでに測定されている放射線量は、血液中のリンパ球の減少や吐き気など、直後に発症する「急性障害」に至るものではない。
一方、原爆被爆者は低線量の被ばくでもがん発症のリスクが高くなるという研究結果があり、長い潜伏期間を経て現れた「後(こう)障害」の存在が明らかになっている。
原爆の惨禍を生き延びた被爆者は、放射線の本当の怖さは急性障害だけではなく、将来にわたる不安だと訴えている。立命館大の安斎育郎(あんざい・いくろう)名誉教授(放射線防護学)は、「国は長期間のケアができる態勢をつくるべきだ」と話している。
命綱の衛星電話守った…津波にのまれた事務局長
2011年3月23日 提供:読売新聞
東日本巨大地震の大津波で全壊した岩手県陸前高田市の県立高田病院のスタッフが、1台の衛星電話を手に、市内の別の場所に設けた仮設診療所で被災者の診療を続ける。
「横沢伝声器」とスタッフが呼ぶこの衛星電話は、今月末で定年退職する予定だった病院事務局長の横沢茂さん(60)が、命をかけて津波から守った。有線電話や携帯電話の不通が続く中、薬品調達や救急患者の情報収集の〈命綱〉となっている。
11日の地震発生直後、鉄骨4階建ての病院は入院患者や医師のほか、避難してきた住民ら100人以上であふれていた。「大きな津波が来るぞ」。数分後、あちこちで声が上がった。
3階にいた事務員の冨岡要さん(49)は窓の外を見た。10メートルを超える大きな津波が迫っていた。1階事務室まで階段を駆け下りると、横沢さんが窓際に設置されていた衛星電話を取り外そうとしていた。通信衛星を介して通話する衛星電話は、地上の施設が壊滅すると使えなくなる携帯電話や固定電話と比べ、災害時に強い。
「津波が来ます。早く逃げて下さい」。冨岡さんは大声で伝えた。横沢さんは「これを持って行かなければダメだ」と叫んだ。冨岡さんは駆け寄り、横沢さんから衛星電話を受け取って、屋上まで駆け上がった。病院が4階まで津波にのみ込まれたのは、その直後。横沢さんは行方不明になった。
衛星電話は11日こそ起動しなかったが、屋上からヘリコプターで救助されたスタッフらが13日に再び試すと、回線がつながった。
衛星電話で薬品や医療機器の融通を他の病院や業者に依頼。体制を整えた病院は震災4日後の15日、同市米崎町のコミュニティーセンターに診療所を仮設し、医療活動を再開した。22日も衛星電話が避難所の急患情報を得る唯一の手段だ。
診療再開後は、毎日約150人以上が訪れる。高血圧や糖尿病の患者、地震のショックで眠れないと訴える人など様々だ。地震前から高血圧で通院していた菊池利義夫さん(83)は「こんな状況でも、きちんと薬を出してもらえる。本当にありがたい」と話す。
横沢さんの遺体は21日、遺体安置所を捜し歩いていた妻の澄子さん(60)と長男の淳司さん(32)らが確認。22日、同県紫波町の自宅に帰った。横沢さんは県の病院事務職員として単身赴任で県内を巡り、2年前から高田病院事務局長になった。同僚たちは「患者の目線に立った柔らかい語り口で好かれていた」と口をそろえる。
遺体と対面した澄子さんは、「お父さん、ご苦労さま」と心の中で語りかけながら、右耳についた砂を手でそっと払った。「患者のために忙しく、自宅への連絡まで気が回らないのでは」という祈りはかなわなかった。だが、今はこう思う。「皆さんのために役だったのは本当に良かった。本人も家に戻ってこられて、安心したでしょう」
衛星電話には「事務局長さんが天国で手伝いしています」と書かれた紙が張られている。(天野雄介)
看護師候補、被災地に残留 避難勧告拒み負傷者手当て
2011年3月23日 提供:共同通信社
【ジャカルタ共同】「病院に残り、日本の人々を助けることを決めた」-。インドネシア政府は22日、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県で、インドネシア人の看護師候補者1人が東京への避難勧告を拒否し、国立病院にとどまって負傷者の手当てを続けていることを明らかにした。
同国政府によると、この看護師候補者はインドネシア・スマラン出身のリタ・ルトナニンティアスさん(35)で、2009年に来日。宮城県内で働くインドネシア人看護師候補者と介護福祉士候補者は計9人いるが、リタさん以外は在日インドネシア大使館の勧告に従い、東京へ避難したという。
政府幹部は「リタさんは『人道的な仕事なので病院に残り、日本の人々を助けることを決めた』と言う。彼女の決断はインドネシアの誇りだ。両国の絆をさらに深めてくれる」と称賛した。
日本とインドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づき、08年からインドネシア人看護師・介護福祉士候補者の日本への派遣事業が行われている。
在宅患者、分かれた生死 電気断たれ、孤立の2家族 宮城県内陸の大崎市
2011年3月23日 提供:共同通信社
東日本大震災の被害は、津波に襲われた沿岸から遠く離れた内陸部に暮らす在宅医療の患者にも及んだ。北は秋田県、西は山形県と接する宮城県大崎市で明暗が分かれた二つの家族。専門家は「在宅患者は災害時に孤立し、死につながる。救助のネットワークづくりや、予備機材のきめ細かい配備が必要」と指摘する。
茶の間で、イチゴを食べていた時だった。突然の大きな横揺れ。震度6強だった。相沢盛次(あいざわ・もりじ)さん(78)は妻の文江(ふみえ)さん(79)をかばおうと立ち上がり、倒れかかろうとする大きな茶だんすを支えた。隣の部屋に逃げ込んでいた文江さんは、しばらくして大きなアラーム音を聞いた。
「お父さん、酸素、酸素、早く」
盛次さんは呼吸器系の疾患で在宅医療中。24時間、部屋の隅に置いた酸素濃縮器からチューブで酸素を取り込みながら生活していた。これが動かなくなった。急いでボンベに切り替えなければならない。
必死で操作する盛次さん。顔が見る見るゆがむ。文江さんも手伝うが、作動しない。救急車を呼ぶ。隣の家にも助けを求める。救急車は来ない。顔は真っ青。市の職員の手で最寄りの病院に担ぎ込まれるまで30分が過ぎていた。間に合わなかった。
「『あと4、5年は生きるぞ』と、リハビリを頑張っていたのに...」。文江さんは震災前日に撮った盛次さんの写真を見つめ、目頭を押さえた。
相沢さん宅から約2キロ離れた濁沼さつ子(にごりぬま・さつこ)さん(55)は、ベッドにしがみつきながら、必死で人工呼吸器を押さえた。夫の正(ただし)さん(57)は脳出血の後遺症で寝たきりの生活。2人ともけがもなかったが、停電し、電話も通じない。呼吸器のバッテリー残量は7時間を切っていた。発電機と重油が必要だった。
近所の人に声を掛け、農家を探し回ったり、市役所に掛け合ったが手に入らない。知らせを聞いて総合病院まで1時間歩いてたどり着いた正さんの担当医が、入院を手配した。
「皆さんに命を救われた」とさつ子さん。話すことができない正さんは横で何度もうなずいた。
「医療者が付き添っていれば助けられるが、患者は点在し、電話もつながらなかった」。二つの家族を支援する大崎市の「穂波の郷クリニック」の三浦正悦(みうら・まさえつ)院長は盛次さんの死に無念さをにじませる。
外来、入院に次ぐ"第3の医療"といわれる在宅医療。「自分らしく生きたい」と選ぶ患者は年々増加している。
医師求め転々と 宮城・南三陸、悪路3キロ背負い
2011年3月23日 提供:毎日新聞社
東日本大震災:医師求め転々と 南三陸、悪路3キロ背負い /宮城
津波に襲われた宮城県南三陸町戸倉長(とくらなが)清水(しず)の民宿に避難していた5歳の男児が深夜、「息が苦しい」と訴えた。国道が寸断され救急車を呼べない。父は避難所の仲間に手伝ってもらい、交代で息子を背負って3キロの悪路を歩いた。やっと救急車に乗せると、今度は病院が負傷者でいっぱいで受け入れてくれない。診察を受けられたのは翌日の昼だった。男児は回復したが、父は「いつも通りのことができない災害の恐ろしさを知った」と振り返った。【杉本修作】
青森県に単身赴任していた会社員、須藤正一さん(55)は、家族が地震で避難したと聞き、戸倉長清水の民宿「ながしず荘」で妻や子どもと合流した。
次男竜平君(5)が発熱し、風邪の症状を訴えたのは18日のことだ。須藤さんは市販の風邪薬をすりつぶし、量を減らして飲ませたが、夜になって竜平君はせき込み始め、呼吸も苦しげになった。「早く医師にみせなければ」と近くの避難所にいた女性看護師に言われたが、近くに医師はいない。
戸倉長清水は町の中心部から南東に約7キロ。海岸沿いを走る国道398号は、津波が運んだがれきで所々埋まり、折立(おりたて)川の橋も流されていた。深夜でヘリも飛べず、正一さんは救急車が来られる折立川の北まで、竜平くんを背負って行くことを決めた。
友人の男性が懐中電灯で足元を照らし、須藤さんの親戚の男性と交代で体重が25キロ以上ある竜平君を背負った。ぬかるんだ凹凸の道を40分歩き、待機していた救急隊員に託した。
しかし、救急隊員が搬送を打診すると、付近の病院はみな「重篤な負傷者が多数いて、受け入れる余裕がない」「その子は重症とは言えない」などと受け入れを断った。1時間以上転々とした末に受診をあきらめ、隣の登米市の避難所で親子は一夜を明かした。「町から遠く離れて医師を見つけても、今度は帰れなくなる。待機するしかなかった」と須藤さんは言う。
翌19日昼、鳥取県から来た医師が避難所に来たため、幸い診察を受けることができた。風邪と薬のアレルギーが原因だった。
竜平君は今、症状もほとんどなく元気だという。
被災地の医師不足はこれからも続き、道路はいつ開通するか分からない。須藤さんは「つらかったが、自分だけのことではないので、あきらめるしかない」と話した。
群馬・計画停電 「透析受けられる?」 腎臓病患者に不安
2011年3月23日 提供:毎日新聞社
東日本大震災:計画停電 「透析受けられる?」 腎臓病患者に不安 /群馬
東日本大震災で計画停電が実施され、人工透析を受けている県内の腎臓病患者が不安を募らせている。自家発電を備えていない医療機関では透析に必要な機器が使えないため、患者団体からは「これまで通り、透析を受け続けることができるのか」との声が上がっている。
県内の患者団体「県腎臓病患者連絡協議会」(事務局・前橋市、会員約2600人)によると、患者の多くは週3回程度、透析を受けるため医療機関に通院する必要がある。機器が使えずに透析が受けられなければ、体内に老廃物がたまり生命にかかわる。
同会の水沼文男会長は「計画停電で県内の医療機関同士が患者の受け入れ協力をしてほしいが、患者側は情報を待つしかない」と不安を募らせる。
自家発電装置を備えていない小規模病院に加え、自家発電ができても「透析液を作る機械は大容量が必要で、自家発電だけでは対応できない」(安中市の公立碓氷病院)と苦悩を深める病院もある。
患者は通常約4時間の透析を受けなければならず、医療機関は事前に透析計画を立てるが、停電日程は不透明だ。同病院は「普段協力を仰いでいる他病院も同じ停電のグループに入っており、協力要請しにくい。被災した近隣県の患者を受け入れると、透析計画がさらに組みにくくなる」と話している。【庄司哲也】
長期停電…家族の手、命つなぐ 仙台のALS患者・土屋さん一家
2011年3月23日 提供:毎日新聞社
東日本大震災:長期停電…家族の手、命つなぐ 仙台のALS患者・土屋さん一家
◇長期停電で呼吸器ダウン
東日本大震災は、人工呼吸器を使って自宅療養する患者とその家族を、長期停電という形で不意打ちした。仙台市のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者、土屋雅史さん(53)宅でも地震直後に電気が止まり、一晩中、妻佳代子さん(50)ら家族が交代でゴム製の袋を手で押し、土屋さんに空気を送り続けた。翌日からは知人や主治医の支援で電源が確保され、ぎりぎりのところで窮状を脱した。佳代子さんは「自分たちだけでは乗り越えられなかった」と話す。【遠藤和行】
ALSは全身の筋力が衰える難病で、進行すると呼吸に必要な筋力も弱まり、24時間の介助が必要になる。10万人に数人の割合で発症し、10年3月末現在、全国で8492人、宮城県内には155人の患者がいる。
06年に発症した土屋さんは、09年に人工呼吸器を装着した。11日、地震直後の停電で人工呼吸器の電源が内蔵バッテリーに切り替わった。もって1時間。佳代子さんは呼吸器を非常用の外部バッテリーにつないだ。それも深夜に切れた。
あとは手動の呼吸器しかない。厚いゴムの袋を手で押して空気を送るきつい作業だが、佳代子さんが1時間、息子2人が2時間ずつ交代で押した。この間に自家用車から外部バッテリーに充電した。懐中電灯の薄明かりの中、3人は代用器具を使って土屋さんのたんを取り除く作業もし、ほとんど眠れなかった。
翌日、知人から次々に助けの手が伸びた。「自家発電機を貸すよ」「うちの太陽光発電でバッテリーを充電できる」「ガソリンを譲るよ」。食事を持ってきてくれる人もいた。発電機を借り、停電3日目に主治医からガソリン20リットルが届いて不安が和らいだ。それでも発電機は騒音のため夜は使えず、深夜に1~2時間、手動の呼吸器を使う日が続いた。
電力が復旧したのは15日夜。佳代子さんが「良かった。頑張ったね」と声をかけると、土屋さんは起動した会話用の専用パソコン上に「みんなありがとう」とつづった。
仙台市の「仙台往診クリニック」は人工呼吸器を使って自宅療養する患者45人を支援している。今回の停電では、発電機の燃料不足などから約20人が緊急入院せざるを得なかった。そのうち一人は電力復旧とともに退院を迫られたが、ヘルパーが確保できずに帰宅を断念。山形県の病院にヘリで搬送され、家族と離ればなれになっている。クリニックの川島孝一郎院長は「過去の地震の経験から、停電は6時間程度で復旧すると考えており、長期停電は想定外だった。全患者宅に発電機を装備し、長期停電に備えたい」と話した。
被災地先遣隊が活動報告 兵庫・尼崎医療生協の医師や看護師
2011年3月23日 提供:毎日新聞社
東日本大震災:被災地先遣隊が活動報告--尼崎医療生協の医師や看護師 /兵庫
◇「メンタルケアが大切」
被災した宮城県塩釜市に、医師や看護師を派遣している尼崎医療生協(尼崎市南武庫之荘11)は22日、被災地から戻った先遣隊の報告会を開いた。井村春樹医師(29)は「今すぐ治療が必要な人が、措置を受けられない状況にあることが一番心配」と話した。
医師や看護師、管理栄養士ら5人が、13~19日、塩釜市の坂総合病院で活動した。
井村医師はトリアージに携わり、緊急治療が必要な赤のブースを担当。津波で流され低体温になった人や、パニック状態で手首を切った人もいたという。
避難所を巡回診療した時は、高血圧や糖尿病患者らが、薬が流されてしまい困っていたと報告。遺体検視では、身元を確認できるものが流され、身元不明の人がほとんどだったという。井村医師は「長期的には、津波に流された人などにフラッシュバックが起きないよう、メンタル面のケアが大切になる」と話した。
一方で、「阪神大震災の教訓を生かし、現地の病院が地下水から水をくみ上げるシステムを作っていたので、水不足がなく、感染症が防げている」とも語った。【大沢瑞季】
〔阪神版〕
インフルエンザ患者急増 被災地での拡大を懸念
2011年3月22日 提供:共同通信社
国立感染症研究所は18日、3月第2週のインフルエンザの患者報告数が全国で急増したと発表した。東日本大震災で被災した宮城、福島のデータはないが周辺は増えており、被災地でも増加しているとみられるという。
感染研は「避難所は集団生活で体力が弱っている人も多くインフルエンザが広がりやすい。症状がある人はマスクを着用し、できればほかの人と離れて」と話している。
感染研によると、13日までの1週間で、全国約4700医療機関からの患者報告数は1施設当たり16・81人で、前週から2・96人増加。岩手の一部と宮城、福島のデータはないが、全国の報告数は7万9174人と、前週の6万8327人を大きく上回った。検出が多いのはA香港型。この型が今の時期に流行するのは異例で、高齢者の重症化が懸念されるという。
施設当たり報告数が多い都道府県は山口(43・96人)、大分(37・67人)、愛知(35・64人)、三重(30・96人)、岐阜(29・98人)など。報告した45都道府県中40都道府県で増えた。
感染研感染症情報センターの安井良則(やすい・よしのり)主任研究官は、今後被災地に入る支援ボランティアの増加によりウイルスが持ち込まれる可能性もあることから「体調を崩している人は現地に入るのは控えて」と呼び掛けている。
新型インフル、来年度から季節性と同じ扱いに
2011年3月18日 提供:読売新聞
厚生労働省の感染症部会は18日、2009年に発生した新型インフルエンザについて、感染症法の「新型」の類型から外す意見をとりまとめた。これを受け、厚労省は来年度から新型インフルエンザを従来の季節性インフルエンザと同様の扱いとし、名称を「インフルエンザ(H1N1)2009」とする。
新型インフルエンザは09年4月、世界保健機関(WHO)が発生を公表したことで、国内では感染症法上の「新型」に位置付けられた。部会では今シーズンの流行の規模や期間が、従来の季節性インフルエンザと同様の傾向だったため、「新型」から外すこととした。これに伴い、来年度以降は、緊急のワクチン輸入や、国の事業としての低所得者層向けのワクチン接種費用の減免などがなくなる。
放射線対策 食品・水、数回摂取でも問題なし
2011年3月22日 提供:読売新聞
今回、一部の地域で、ホウレンソウや牛乳などから、国の暫定規制値を超える放射性ヨウ素と放射性セシウムが検出された。
原子力発電所から漏れ出て大気中に飛散した放射性物質が、風に運ばれ、ホウレンソウの表面に付着したり、牛が食べる牧草が汚染されたりしたのが主な原因だ。
放射性物質が付着した食べ物や水を摂取すると、体の中から放射線を浴びる「内部被曝」の原因になる。政府の原子力安全委員会の指針では、牛乳や野菜(根菜、イモ類を除く)、飲料水などについて、摂取制限の指標値を設けている。今回の暫定規制値も、この指標値が基になっている。
牛乳・乳製品は1キロ・グラム当たり放射性ヨウ素なら300ベクレル、放射性セシウムは200ベクレル、野菜は1キロ・グラム当たり放射性ヨウ素が2000ベクレル、放射性セシウムは500ベクレルだ。
政府は暫定規制値を超えた農産物と同じ県単位の産地、種類の農産物について、各県に対し、出荷制限を指示したが、枝野官房長官は「食べてもすぐに健康に(影響を)及ぼすものではないが、(放射性物質の流出が)中長期的にわたって継続した場合の万が一に備えて、今から規制措置をかけておく」と説明した。
食品の安全に詳しい唐木英明・東大名誉教授は「現状では口にしても問題ないレベルだが、仮に流通させても買い控える消費者も多いと思われ、流通経費の損害などを考えると、やむを得ない措置と言えるだろう。今後は、早く事故を終息させることや、正しい情報公開で風評被害を抑えること、農家への補償をきちんと行うことが重要だ」と話す。
また、福島県飯舘村の水道水からは、摂取制限の指標値(1キロ・グラムあたり300ベクレル)の約3倍の放射性ヨウ素が検出された。専門家は、大気中の放射性ヨウ素が、貯水池や水源となる川に直接降り注いだのではないかと見ている。
厚生労働省は、同村に対し、飲用を控えるよう要請した。入浴や手洗いといった飲用以外に用いるのは問題ないとしている。
飲食物の摂取制限の指標値は、それぞれの品目ごとに1年間摂取し続けたと仮定し、放射性物質がどの程度、臓器に取り込まれ、放射線を出して健康に影響を与えるかを大人、子どもそれぞれについて計算した結果に基づき、さらに厳しく設定したものだ。厚労省によると、数回摂取した程度では健康への影響はなく、代わりの飲料水が確保できるまでの短期間であれば、飲用しても問題ないとしている。
内部被ばくの防止が重要 正確な測定値と説明示せ 大阪大名誉教授 野村大成 識者評論「農産物放射能汚染」
2011年3月22日 提供:共同通信社
福島第1原発事故による住民、特に小児への健康影響では内部被ばくがより懸念される。ヨウ素は甲状腺、セシウムは全身の筋肉、ストロンチウムは骨など特定の臓器に集中的に取り込まれ、危険性は高い。
私は旧ソ連チェルノブイリ原発事故後のユネスコによる現地調査、英国セラフィールド再処理工場の裁判などに関わってきた。その経験から現時点の疑問に答えたい。
枝野幸男官房長官らは「直ちに健康に影響はない」と語った。これは原子力事故のたびに国民を安心させるため使われてきた決まり文句である。
急性障害(症状は1シーベルト以上、治療しなければ7~9シーベルトで死亡)は過去の事故例でも、現場の作業員や救援などで立ち入った人に限られている。しかし、住民に問題になるのは、忘れた頃にやってくる、内部被ばくの晩発影響(8割はがん)であり、その予防である。
特に、風に乗って遠くまで運ばれる放射能を帯びた降下物が呼吸や、やがては水、食物を介して体内に取り込まれて内部被ばくする。取り込まれた放射性物質の中には、特定の臓器に集中的に蓄積される元素があり、取り続ければ長期間にわたり放射線を浴びせる。
福島第1原発から約200キロ離れた東京などで検出されている放射線量は風向きや気候で大きく変わる。このまま放出が短期間に収まってくれれば、体内に取り込まれても、首都圏で健康に影響するとは考えにくい。
放射能の環境汚染を正確に測り、汚染地域を設定して対処することがすぐ課題になる。チェルノブイリ事故では風向き、降雨などの影響で100~180キロ離れた所に高濃度汚染地域が現れた。今回、政府は住民を避難させておいて、周辺での農作物の調査が遅れたのではないか。
牛の原乳やホウレンソウから暫定基準値を超える放射性物質が検出されても「牛乳は1年間摂取し続けてもCTスキャン1回分程度」だから安全という政府の発表には異議を唱えたい。医療被ばくは健康へのメリットが多いから、規制が除外されているのであって、安全といっているのでない。しかも、CT検査はエックス線の外部被ばくで、これくらいの線量で発がんの心配はまずない。
これに対し、食物は内部被ばくを起こす。住民、中でも子どもに問題なのはヨウ素131だ。ヨウ素は甲状腺に集まり、ベータ線を出す。半減期が8日と短くても、成長期にある子どもには、取り続ければ危険性が無視できない。
チェルノブイリ事故では10代後半の被ばくでも、事故15年後に甲状腺がんがピークに達し、通常の10倍を超えた。放射能で汚染した牧草を食べた牛の乳を介してヨウ素が子どもの甲状腺に集中した。それに加え、ヨウ素欠乏地域であったため、甲状腺に放射性ヨウ素がより多く取り込まれ、甲状腺の大量被ばくとなり、がんを起こした。今回は、放射性ヨウ素の値はチェルノブイリよりはるかに低いが、注意は必要である。
セシウムは半減期が30年と長く、全身の筋肉に均等に取り込まれるが、排せつされやすい。予防の観点から、暫定基準値を超えた農産物の移動・摂取は厳しく制限しなければならないことは、放射線障害の歴史が物語っている。
風評被害を避けるためにも、政府は土壌や作物を含め、正確な測定値と説明を速やかに示すべきだ。未曽有の大地震津波の被災地を襲った重大な原発事故は一刻も早く終息させ、これ以上の放射性物質の放出を抑えるよう切望する。
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のむら・たいせい 42年名古屋市生まれ。67年大阪大医学部卒。専門は放射線基礎医学。86~05年大阪大医学部教授。現在は大阪大招聘(しょうへい)教授。
1600倍の放射線を測定 IAEA、原発周辺地域で
2011年3月22日 提供:共同通信社
【ウィーン共同】国際原子力機関(IAEA)は21日、IAEAの放射線測定チームが福島第1原発の周辺地域の土壌と大気から測定した放射線量を発表、原発から約20キロ離れた福島県浪江町付近で通常の約1600倍に相当する毎時161マイクロシーベルトの放射線量を測定したと明らかにした。
文部科学省の調査では浪江町で15日、330マイクロシーベルトが測定されている。IAEAは「高い数値が測定された。状況を見守っていきたい」としている。
IAEAのチームは20日、原発から16~58キロ離れた10以上の地点で土壌と大気の双方を測定。測定値には土壌と大気双方のデータを盛り込んだとしている。IAEAによると、原発の50~70キロ圏の土壌からも通常より高い放射線量が測定されたという。IAEAは0・1マイクロシーベルトを通常値としている。
チームは今後数日間、福島県内で作業を続ける。原発から52キロ離れた二本松市内では4・2マイクロシーベルトだった。
IAEAは17日、日本政府の要請でチームを日本に派遣した。天野之弥(あまの・ゆきや)事務局長は「専門家チームをさらに派遣したい」としている。
在日米国人にヨウ素剤配布 「予防的措置」で米政府
2011年3月22日 提供:共同通信社
【ワシントン共同】東日本大震災による福島第1原発の事故で、米政府は日本に滞在する軍人を含む米政府職員とその家族らに対し、放射線被ばくによる健康被害を抑える「安定ヨウ素剤」を配布することを決めた。国務省が21日発表した。
放射性物質漏れがさらに深刻化した場合の「予防的措置」。米原子力規制委員会(NRC)が米国内での放射性物質漏れ事故を想定して定めた基準に照らし実施される。
ヨウ素剤配布の対象となるのは東北、関東地方の全都県と新潟、静岡、長野、愛知県滞在者。国務省は、風向きなどの天候条件に大きく左右されるが、低レベルの放射性物質による汚染はより広範囲に及ぶ可能性があると指摘した。
フランス外務省も17日、在日大使館を通じて東京周辺在住のフランス人に安定ヨウ素剤の配布を始めたと発表していた。
エコノミー症候群「予防を」 岩手・久慈の柔道整復師、体操など指導
2011年3月22日 提供:毎日新聞社
東日本大震災:エコノミー症候群「予防を」 岩手・久慈の柔道整復師、体操など指導
30人が死亡し、約400人が避難生活を続ける岩手県野田村で、同県久慈市の柔道整復師、玉沢誠さん(52)が高齢者へのマッサージや体操の指導をボランティアで始めた。体を動かさない状態が続くと起きやすい「エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓(そくせん)症)」の予防が目的。玉沢さんは「硬い床の避難所で寝起きし、一日中避難所で過ごす高齢者も多いのでは。毎日適度に運動して」と話す。
玉沢さんが久慈市内で接骨院を開いたのは08年12月。震災で接骨院に被害はなかったが、隣の野田村で高齢者が避難生活をしていることを知った。エコノミークラス症候群は血栓が血管に詰まり、死に至ることもある。玉沢さんは17日から接骨院のスタッフと2人で村内の避難所の巡回を始めた。
19日は約60人が避難生活を送る村立野田小学校を訪問。「毎日歩くのが一番の予防になりますよ」などと話しかけながらマッサージをした。「血栓を予防する体操」も紹介。あおむけに寝たまま爪先を上下に10回動かす▽背伸びを3秒間3回繰り返す▽両手を後方に反らし胸を張る運動を5秒間5回繰り返す--などを毎日するよう指導した。【村松洋、小坂剛志】
地震・津波ナビ 妊婦・母親の避難所生活
2011年3月22日 提供:毎日新聞社
地震・津波ナビ:妊婦・母親の避難所生活 /北海道
◇母乳が出ないのは一過性
災害時の避難所生活は、妊婦や乳幼児にとって厳しい環境だ。日本助産師会は東日本大震災直後から救援対策本部を設置し、ホームページ(http://www.midwife.or.jp/)でアドバイスを続けている。
母親がまず心配するのは、赤ちゃんの栄養状態だ。母親はストレスや恐怖で一時的に母乳が出にくくなることがあるが、同会専務理事の岡本喜代子さんは「一過性のもので、赤ちゃんに吸ってもらうことで出やすくなる。すぐにあきらめず、くわえさせて」と話す。赤ちゃんもおっぱいを吸うことで安心するという。粉ミルクをあげる場合、哺乳瓶を清潔に保てなければ紙コップで代用できる。
次に母親自身の健康管理。授乳中や妊娠中に満足な食事が取れなくても、1週間程度であれば問題ない。妊娠中は冷えるとおなかが張ることもあるので、できるだけ温かくする。痛みがあるようなら、医師に診てもらった方がいい。
また、避難所で赤ちゃんが泣かないように気を使って疲れ果ててしまう人も多い。避難所の構造にもよるが、岡本さんは「母親同士が気兼ねなく相談できるような別室を設けるのが望ましい」と指摘する。【今井美津子】
ひととき心を緩めて 香山リカのココロの万華鏡
2011年3月22日 提供:毎日新聞社
香山リカのココロの万華鏡:ひととき心を緩めて /東京
私が勤務する東京の病院にも、震災の影響を受けた患者さんが、大勢やって来る。「余震が怖くて眠れない」「エレベーターに乗れない」という訴えもあるが、災害と直接、関係ない訴えも多い。「なぜだか涙が止まらない」「やたらとイライラする」「落ち着かず立ったり座ったりしてしまう」などがそれだ。
この人たちは、直接、被災地にいなくても、長い時間、映像や情報のシャワーを浴び、心身が疲労していると思われる。そういう人には「少しのあいだ、テレビやネットから自分を遠ざけて、好きな音楽を聴いたりマンガを読んだりケーキを作ったり、いつもしていたことをしてみましょう」とすすめている。
私のことばに、こう反論した人がいた。
「でも先生、そうやって一時、穏やかな時間をすごしたとしても、震災が起きたという事実は変わりません。母の故郷の町も大きな被害を受けたんですよ。いくら楽しいことに逃避しても、はっと現実に戻ると何も変わってないわけでしょう。そうなると余計に落ち込むのでは」
たしかにそういう考えもあるだろう。しかし、私はそれでも「逃避だっていいじゃない」と思うのだ。
これほどの災害になれば、被災地にいる人はもちろん、そうでない人も、心はボロボロに傷つく。本当の意味で立ち直るには長い時間がかかるかもしれないが、ひととき、“止まり木”のようなところに心を避難させることも必要だ。30分でも1時間でも、目の前の現実から逃避して、ゲームやドラマの世界に浸る。時間をかけてお茶を飲み、「ああ、おいしい」と声に出してみる。その間だけでも、不安や絶望の感情にふたをする。
そうやって、たとえ幻想やバーチャルの世界を使ってでも、ひととき心を緩め、ほっとする時間を持つことは、必ず回復の力につながっていく。24時間ずっと悲しい、苦しい、ばかりでは、心のエネルギーはどんどんすり減り、回復が遅れてしまう可能性もある。それよりは、たとえまやかしだったとしても、ひととき楽しい気持ちを味わったほうが、少しだけ前向きな気分で現実に取り組んでいくことができるはずだ。
目の前の現実は、すぐには変わらない。つらい気持ちも、長く続くかもしれない。それでも、いやそれだからこそ、ほんのひとときの現実逃避を。そうすすめたい。
〔都内版〕
難病「肺リンパ脈管筋腫症」にラパマイシン有効 国際チームが臨床
2011年3月18日 提供:毎日新聞社
難病:「肺リンパ脈管筋腫症」にラパマイシン有効 国際チームが臨床
呼吸不全を招き、重症化すると肺移植が必要な難病「肺リンパ脈管筋腫症」の治療に、ラパマイシンという免疫抑制剤が有効であることを、日米とカナダの国際研究チームが、患者を対象とした臨床試験で確かめた。これまで症状の進行を抑える薬はあったが、肺機能を根本的に改善できなかった。米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」(電子版)に17日、論文が掲載された。
研究チームには新潟大と国立病院機構近畿中央胸部疾患センター(堺市)が参加した。この病気の患者は国内で推定300人ほどで、ほとんどが女性。10~50代で発病し、ある種の遺伝子の損傷によって異常な細胞が増え、肺に小さな穴が多く開いて機能が低下する。
チームは06~10年、患者46人に1年間、ラパマイシンを経口投与した。その結果、偽薬を投与した43人と比べると、息を吐き出す量の数値が1~2割上がり、症状がよくなった。酸素吸入が要らなくなった人もいた。副作用はほとんどなかった。ラパマイシンは日本では未承認。同センターの井上義一部長は「薬代以外の医療費が保険適用される国の高度医療に申請する」と話している。【野田武】
慢性疾患の薬紛失 処方箋なしで調剤
2011年3月17日 提供:読売新聞
東日本巨大地震を受け、厚生労働省は17日までに、慢性疾患の医薬品を避難中になくした被災者が処方箋なしでも紛失した分を受け取れるよう各自治体に通知した。
被災地では医師と連絡が取れない場合も多いが、お薬手帳などで安定した慢性疾患の治療継続中であることがわかれば、処方箋の必要な薬でも薬局などで受け取ることができる。ただ、対象になるのは紛失した分に限る。
避難中に薬を飲みきった場合などは、改めて処方箋が必要となるが、電話連絡等で医師が後日、処方箋を発行することが確認された場合は薬を受け取れる。
「山田の赤ひげ」大奮闘 連日往診、被災者に元気
2011年3月18日 提供:共同通信社
「今日はどこが悪いの」「家族は無事か」。岩手県山田町で、県立山田病院の平泉宣(ひらいずみ・せん)副院長(52)が避難所を回り、連日100人以上を無料で診察している。自らも被災した「山田の赤ひげ」の奮闘に被災者は「元気をもらえる」と大喜びだ。
平泉さんが山田病院に赴任したのは6年前。盛岡市の別の病院に勤めていたとき「地方の医師不足に取り組まなければ」と思い立った。外科が専門だが、3年前に内科の常勤医が転勤してからは内科の診察もこなす。
震災当時、津波は山田病院にも到達し、2階建ての1階が浸水、大きな被害を受けた。平泉さんも自宅を流されたが、落ち込む間もなく、病院の2階で診察を続けた。
避難所の巡回診療は、救援の薬が届いた15日から始めた。高血圧や糖尿病の薬を津波に流され、避難所で不調を訴える住民が多かったためだ。
平泉さんは17日、避難所の豊間根小学校や保育園を訪問。机と椅子を3個並べただけの即席の診察室には、たちまち長蛇の列ができた。
われ先にと押しかける人に「順番だかんな」と笑顔で諭したり、疲れた顔の高齢者を「ちゃんと眠れているか」といたわったり、風邪気味の子どもののどをのぞいたり。
診察の際には必ず「家は大丈夫か」「家族は無事か」と声を掛ける。「避難所の生活はストレスがたまる。悩みを聞いたり、心のケアをすることも大事」と強調する。
高血圧の薬をもらいに来た80代の女性は「『やさしくて丁寧な診察をする』と評判の先生。会えただけで元気が出た」とうれしそうに話した。
往診には悩みもある。買い物かごにいっぱいの薬も「2、3日でなくなる」と平泉さん。手渡すのは最大10日分で、余分にほしがる患者には「ごめんな。我慢して」。「来週にはまた薬が届くと思うが、滞ると苦しい」と不安を口にする。
被災から1週間たったが、山田町の復興にめどは立たない。困難な状況でも「町の人の健康は守る」。温和な表情の中に、強い決意をのぞかせた。
避難所でインフル感染疑い 拡大懸念、外部と面会禁止
2011年3月17日 提供:共同通信社
岩手県釜石市の避難所で、インフルエンザに感染した疑いがある子どもが確認され、外部からの訪問者と住民の面会を禁止したことが16日、市関係者らへの取材で分かった。
親族を捜す人の立ち入りも原則禁じる。所在確認作業を妨げる恐れもあるが、市関係者は「インフルの爆発的流行を防ぐため」としている。
面会禁止を決めたのは、釜石市中部にある小学校を使った避難所で、約330人が入所し、半数が子ども。15日に子ども1人がインフル感染の疑いと診断され、ほかに約10人が感染性の胃腸炎とされた。このうち2人が病院に入院した。
避難所運営を手伝う市の災害対策担当者や同小学校側が16日午前、避難住民の代表者らに現状を説明、合意を得て決めた。住民らに外出を極力控えるよう要請。インフルエンザのウイルスが避難所から広がったり、外部から持ち込まれたりするのを防ぐことへの理解を求めた。
同校では他の避難所同様に入所者の名簿が入り口に掲示されているが、名前がなくても実際に顔を見て確かめるため校内を歩き回る人が多く、インフル拡大につながると判断したという。
避難所では、入所者の体力が低下していることに加え、極端なガソリン不足で救急車の手配が得られる保証はなく、厳しい措置に踏み切ったとしている。
我慢しないで早期治療を 危険な高齢者の低体温症
2011年3月17日 提供:共同通信社
厳しい寒気の中で避難所生活を送る東日本大震災の被災地では、特に高齢者の低体温症に注意が必要だという。高齢者の低体温症の症状と対処法について、山口芳裕(やまぐち・よしひろ)杏林大教授(救急医学)に聞いた。
× ×
避難所での生活は寒さに加え栄養状態が悪く、水分を取りにくい。これにストレスと疲労が重なり、低体温症になりやすい環境ですが、特に高齢者は危険です。新潟県中越地震や阪神大震災でも、「自分はいいから、若い人を診てやってくれ」と我慢してしまうお年寄りほど、低体温症が進行していました。
低体温症には、冬山で凍死するような急性型と、少しずつ体温が下がり、代謝が落ちるタイプがあるようです。避難所で注意しないといけないのは後者です。
そのまま進行すると、起き上がれなくなり、意識を失います。これまで被災地の冬の避難所で亡くなる高齢者がたくさんいました。
対処法としては、カロリーの高い温かい食事を食べること。体温が下がると利尿作用が働いて脱水症状が進み、血圧も下がるので、水分をしっかり取ってください。厚い服を着て、毛布を使い、体を温めてください。
寒いのに震えも止まるほど体温が下がった場合は、首、脇の下、脚の付け根をカイロや湯たんぽなどで温める。体を温めようと、さすると、体表面の冷たい血液を心臓に流すことになるので避けてください。
災害の初期、医師や看護師は押し寄せる患者からの訴えで、身動きがとれません。遠慮しがちなお年寄りの心理状態に周りの人が注意してあげてください。話し方がゆっくりになる、歩行がおぼつかなくなる、意識が薄らいでしまう、会話のつじつまが合わない...などの症状に気づいたら、早期に治療を受けさせてあげてください。
女性への医療サポート開始 ジョイセフ、助産院拠点に
2011年3月17日 提供:共同通信社
国際協力非政府組織「ジョイセフ」(東京)は16日までに、日本助産師会(同)と協力、各地の助産院を拠点に、被災した妊産婦や新生児らへの医療やカウンセリングなどのサポートを開始した。衛生や治安で不安を抱える避難所の女性にとって、心と体の両面で支えになると期待が集まっている。
拠点になるのは北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城の1道5県計7カ所の助産院。避難所などへ出張し、妊婦健診を含む通常の産前産後の保健サービスのほか、女性へのカウンセリングを行う。紙おむつや衛生用品、女性用下着、新生児用衣類も配布する予定だ。
ジョイセフ広報の甲斐和歌子(かい・わかこ)さんは「男女混合の避難所では着替えの場所もなく、健康への影響が心配。助産師は出産だけではなく、性教育から更年期にかかわる問題まで幅広く分かる。十分に支援を行いたい」と話している。
女性の避難所での生活をめぐっては、専用の部屋や授乳室の設置、トイレに仕切りを設けることなどが重要。阪神大震災での経験を基に災害時の女性の状況を調査してきた「女性と災害」情報ネットワークの代表、正井礼子(まさい・れいこ)さん(61)は「人の目が気になってトイレや着替えを我慢してしまい、ぼうこう炎などの病気になることもある」と指摘する。
女性警察官を配備する、就寝時に完全に消灯しない、消灯する場合は警備を強化する―などの配慮も必要で、正井さんは女性が相談しやすい雰囲気や環境をつくるために「避難所の運営に女性を3割は入れてほしい」と訴えている。
識者談話
2011年3月17日 提供:共同通信社
▽赤ちゃんが飲んでも大丈夫
名古屋大の山澤弘実(やまざわ・ひろみ)教授(環境放射線)の話 国の基準は、飲食物の制限が適切かどうかの検討を開始する目安であり、かなり低めに設定してある。この基準を超えたら直ちに一切、口にしてはいけないということではなく、基準以下なら、まず健康上の問題はない。避難所から移動できず心配する人もいるだろうが、基準は一番影響を受けやすい人を考慮してつくるので、今回のレベルなら、例えば赤ちゃんのミルクをつくるのに使っても大丈夫だと思う。セシウムなどは、ミネラル類を取り除くことができるイオン交換樹脂で除去できるが、浄水場など大規模なところで同じことが可能かは分からない。
▽予想被ばく量の評価を
京都大原子炉実験所の今中哲二(いまなか・てつじ)助教(原子力工学)の話 このレベルであれば、すぐに健康影響が出ることはもちろんないだろうが、放出されている放射性物質の種類や濃度を調べ、予想される被ばく量をきちんと評価した上で「こういう対策をしてください」という勧告がなされるべきだ。チェルノブイリ原発事故では、子どもの甲状腺がんが大きな問題になったので、それに対し最大限配慮して対応することが大事だ。水も飲まなければいけないし、風呂も入らなければいけないので、(大丈夫かどうか)判断できる情報をきちんと出すべきだ。
▽正しい情報で冷静に行動を
長崎大の山下俊一(やました・しゅんいち)教授(被ばく医療学)の話 検出されたヨウ素もセシウムも、原子炉から放出されたものと考えられる。2回目の測定で検出されなかったのは、いったん水に入ると拡散するのと、放射性物質が均一に出ているわけではないことが関係しているのではないか。健康上は赤ちゃんでも高齢者でも全く心配ない数値だ。被災地ではみんな極限状態にあるので、被ばくを心配するあまり精神的に不安定になるくらいなら、赤ちゃんのミルクなどにはミネラルウオーターを使えばいい。風呂や洗濯に使うのも問題ない。不安や不信が募りやすいので、正しい情報に基づき冷静に行動することが大事だ。
「ウオーターワールドか」 水没の町、病院屋上で一夜
2011年3月17日 提供:共同通信社
市庁舎が水没するなど壊滅的被害を受けた岩手県陸前高田市。最上階まで水につかった県立高田病院の屋上で約100人と一夜を過ごした盛岡市の畑中喜行(はたなか・よしゆき)さん(30)が16日、青森発の臨時便で大阪空港に到着、当時の生々しい状況を語った。
医療機器メーカーの営業で病院を訪れ、車の中にいた。突然、車をつかんで揺さぶられるような横揺れ。携帯電話はまだ通じ、大阪の実家からのメールに「大丈夫」と短く返事した。震源は宮城沖。ここまで津波は来ないと楽観していた。
しかし病院に入ると、「津波が来るぞ、すぐ上がれ」と怒鳴り声。3階の窓から見ると、すでに津波が眼下に押し寄せ、家屋や車を次々とのみ込んでいた。「ものすごい地鳴り。津波が明確な意思を持って襲いかかってくるようだった」
水が最上階の4階に達するまで5分足らず。屋上に避難したが、病院ごと押し流されるのか屋上まで水が来るのかと不安は頂点に。「もうダメかな」と覚悟を決めたころ、水の勢いは止まった。
ホテルやマンションなど幾つかの建物だけ水面に顔を出し、救助を待つ人の姿が見えた。「ここはウオーターワールドか」。ぼうぜんとたたずむしかなかった。
寝たきりの患者も職員総掛かりで運び上げた。だが約1時間後、少し水が引き、医薬品をさがしに下りると、倒れた棚の下などでパジャマ姿の患者数人が亡くなっていた。
雪の舞う夜、屋上で机を燃やし、ポリ袋をかぶって寒さをしのいだが、震えは一晩中、止まらなかった。翌日朝、救助ヘリが発見。数時間後には畑中さんも救助された。
「なぜ自分は助かったのか」。あれだけの被害で生き残った実感がまだないが、医師や看護師が患者のため黙々と動き回る姿を見て冷静さを失わずに済んだ。パニックになる人も出なかった。「病院職員と救助活動してくださった方々には本当に頭が下がる思いです」
ボランティアの窓口設置を 医師派遣で都道府県に要請
2011年3月17日 提供:共同通信社
厚生労働省は17日、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県でボランティア活動を希望する医師や看護師向けに申し込みの受け付けなどに応じるよう、3県を除く都道府県に求めた。
宮城、福島の2県でのボランティアを希望する場合、都道府県が設けた窓口に申し込む。都道府県は、医師らが活動できる期間や現地に持っていける食料、医薬品などの量について厚労省に定期的に報告し、被災地と調整した上で希望者を派遣する。
岩手県での活動希望者には、日本医師会の派遣チーム活動に参加するよう求める。
また日本赤十字社など関係団体にも、3県から具体的な要請があった場合、医師らを派遣するよう求めた。
死者5千人超える 捜索範囲徐々に拡大 「生活支援に注力」指示も 東日本大震災、7日目
2011年3月17日 提供:共同通信社
東日本大震災は17日、発生から7日目を迎えた。正午現在の警察庁まとめで、死者は12都道県の5178人となった。行方不明者は6県の8913人で、死亡・不明は計1万4091人。がれきの撤去が進んで捜索範囲が徐々に拡大、孤立していた避難所へのサポート態勢も整いつつあり、生活支援が本格化する。
警察庁によると、17日午前10時までに岩手、宮城、福島各県で計約2千体の身元を確認。うち870体を遺族らに引き渡した。避難は前日より数万人減り、8県で約38万人となった。総務省消防庁によると全壊や半壊、一部破損の建物は計10万396棟に上っている。
阿久津幸彦内閣府政務官は17日朝、宮城県の災害対策本部で「きょうからは避難者の生活支援に注力するように」と松本龍防災担当相から指示を受けたと明らかにした。同県によると、県外から被災者の心のケアを担当する専門家が到着する。
宮城県は17日午後にも避難所にいる人の氏名をホームページで検索できるようにする。同県は「ヘリコプターで孤立地域を確認する活動はほぼ終了した」とし、ヘリは17日から物資の運搬に専念すると説明。陸上自衛隊も「大人数で取り残されている場所はなくなってきている」とした。
岩手県陸前高田市では、自衛隊ががれきをどかして道路を造成、消防や自衛隊などが捜索を続けた。戸羽太(とば・ふとし)市長は「入れない所があったが、今は車で行けない所はない」と話す一方、「暖房用や、重機を動かしたり避難所へ物資を届けたりするにも燃料がいるが、非常に厳しい」と訴えた。
政府によると、被災地にはパンなど約146万人分の食事が配られ、1300キロリットルの燃料を供給。東北地方は17日朝、盛岡市で氷点下5・9度、仙台市で同2・7度の最低気温を記録、厳しい冷え込みとなった。
在宅療養で35病院に窓口 計画停電に対応
2011年3月16日 提供:共同通信社
厚生労働省は15日、東京電力による計画停電で、在宅療養中の患者が人工呼吸器などの医療機器を使えなくなるトラブルに対応するため、東電管内にある9都県の社会保険病院など35病院に、相談窓口を設けた。
在宅療養支援診療所と訪問看護ステーションが患者の相談を受け、停電時に使うバッテリーの確保策などについて病院と協議。緊急の際には、患者の一時入院を受け付ける。
35病院は以下の通り。
【茨城県】霞ケ浦医療センター(土浦市)▽鹿島労災病院(神栖市)▽茨城東病院(東海村)
【栃木県】宇都宮社会保険病院(宇都宮市)
【群馬県】社会保険群馬中央総合病院(前橋市)▽高崎総合医療センター(高崎市)▽沼田病院(沼田市)
【埼玉県】社会保険大宮総合病院(さいたま市)▽埼玉病院(和光市)
【千葉県】千葉医療センター▽千葉東病院▽千葉社会保険病院(以上、千葉市)▽下志津病院(四街道市)▽千葉労災病院(市原市)
【東京都】東京医療センター(目黒区)▽東京労災病院▽社会保険蒲田総合病院(以上、大田区)▽社会保険中央総合病院▽東京厚生年金病院(以上、新宿区)▽せんぽ東京高輪病院(港区)▽東京北社会保険病院(北区)▽災害医療センター(立川市)▽東京病院(清瀬市)
【神奈川県】横浜医療センター▽横浜労災病院▽社会保険横浜中央病院▽横浜船員保険病院(以上、横浜市)▽関東労災病院▽川崎社会保険病院(以上、川崎市)▽神奈川病院(秦野市)▽社会保険相模野病院(相模原市)▽湯河原厚生年金病院(湯河原町)
【山梨県】社会保険山梨病院(甲府市)▽社会保険鰍沢病院(富士川町)
【静岡県】三島社会保険病院(三島市)
計画停電で患者支援を要請
2011年3月16日 提供:共同通信社
厚生労働省は15日、東北電力の計画停電に備えるため、在宅医療の患者に対し人工吸入器などの代替機器の貸し出しに医療機関が応じるよう、対象地域の山形など7県や関係団体に連絡した。
また医療機関には、停電に備えた自家発電機の点検や燃料の確保を要請。停電時に患者が自宅で生活を続けるのが難しい場合は、一時的に医療機関で受け入れるよう求めた。
被災病院再建の融資優遇 厚労省
2011年3月16日 提供:共同通信社
厚生労働省は15日、独立行政法人福祉医療機構で実施している病院などを対象とした融資事業で、東日本大震災の被災施設の再建費用や運転資金の融資基準を緩和する優遇措置を決めた。避難生活の長期化が予想される中、被災者の健康不安が増しており、医療、福祉施設の再建促進が急務と判断した。
病院と診療所については、所定の融資限度額を2倍に拡大。事業費の20%を自己資金で賄わなければならないと定めている融資時の条件を10%に緩和する。
社会福祉施設に対しても融資限度額の上限を広げるほか、児童福祉施設や老人福祉施設の再建資金を無利子融資する。
作業員の被ばく量引き上げ 福島原発事故で厚労省
2011年3月16日 提供:共同通信社
厚生労働省は15日、東日本大震災での福島第1原発事故で応急対策にあたる作業員に関し、放射線の被ばく線量限度を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げる規則の特例を定めたと発表した。経済産業省などの要請に基づくもので、250ミリシーベルトへの引き上げは初めて。これにより1回あたり15分程度だった作業時間が30分程度に増えるという。
国際基準では重大事故時の被ばく線量限度は500ミリシーベルトとなっているが、会見した小宮山洋子副大臣は「労働者の健康を考えると今後さらなる引き上げは考えられない」とした。
また同副大臣は、福島第1原発事故で半径20キロ外に避難した住民の検査などのため、全国の都道府県などに対し医師や放射線技師の派遣を打診していることを明らかにした。
被災地に医師ら派遣 数百人規模、日医
2011年3月16日 提供:共同通信社
日本医師会(日医、原中勝征会長)は15日、東日本大震災の被災地となった岩手、宮城、福島、茨城の4県に医師や看護師ら医療スタッフを派遣すると発表した。避難所や救護所での医療に当たるほか、被災地の病院や診療所を支援。検視などにも協力する。派遣人数は数百人規模で、こうした支援としては過去最高となる見通しという。
日医によると、被災地以外の都道府県医師会から希望者を募り、被災者側の要望に応じて順次派遣。すでに一部スタッフは現地入りしており医師1人、看護師2人、事務職員1人の計4人でつくる医療チームで活動する。チームは3日~1週間交代で現地に入り、1カ月をめどに支援する予定だが、状況に応じて延長も検討するという。
日医は「避難時に薬などの医療品を持ち出すことのできなかった慢性疾患がある患者への対応や相談にも広く応じたい」としている。
うがい薬売り切れも 「飲まないで」と専門家
2011年3月16日 提供:共同通信社
東日本大震災に伴う福島原発放射性物質漏えいで15日、首都圏でも通常より高い放射線量を観測した。都内の薬局でヨウ素入り消毒薬やうがい薬を買い求める客が急増、専門家は「飲まないで」と呼び掛けた。スーパーやホームセンターは、電池や水の品不足が続く。
世田谷区の薬局では、うがい薬やヨードチンキが在庫切れに。被ばくによる健康被害を抑える「安定ヨウ素剤」服用には医師の処方が必要だが、ヨウ素はうがい薬などにも含まれるため、代替品と誤解されやすい。
放射線医学総合研究所は「内服すると有害成分が多い。飲むのは絶対にやめて」と呼び掛ける。「これは安定ヨウ素剤でなく、うがい用です」とレジで念を押す薬局も。
大手量販店ドン・キホーテはここ数日、首都圏の店舗中心に高機能マスクや消毒用ハンドソープ売り上げが通常の2~3倍で「放射能対策かも。インフルエンザ予防用なのに」と困惑する。埼玉県内のホームセンターは地震発生直後からカセットこんろやペットボトルの水が品薄になり、今後は肌を隠す雨がっぱや帽子などの需要が増えると予測。「客は何としても身を守りたいという心理状態になっている」と指摘する。
乾電池などがほぼ完売の都内のスーパーも、入場制限するほど客が開店前から詰め掛け「原発事故の影響は予測できない」と不安を口にする。
東京ディズニーリゾートやよみうりランドなど、地震直後から休園を続ける遊園地も多い。東京・浅草花やしきは営業を再開したが「原発との関係は分からないが、客は極端に少ない」と話す。
放射性物質、人体の影響は ガス、ちり...、原発事故
2011年3月16日 提供:共同通信社
東日本大震災による東京電力福島第1原発の事故で、燃料であるウランの核分裂でできた放射性物質が大量に放出される事態が懸念されている。ただ放射性物質といっても多種多様で、指摘される人体への影響もさまざまだ。
気体で放出されるのは、空気中にも微量含まれる「希ガス」のキセノンやクリプトン。ただ軽いため比較的拡散しやすく、濃度が高いまま空中に広まる恐れは少ない。希ガスは化学的に安定しており、ほかの原子とは化学反応しにくく、例え吸い込んでも自然呼吸で排出し、体内には残りにくいとされる。
同じ気体でも放射性ヨウ素は懸念がある。自然界にある非放射性のヨウ素は甲状腺に沈着、成長ホルモンのもとになる。放射性ヨウ素も同様に沈着し、甲状腺がんを引き起こす場合がある。
ちりの形で放出されるセシウムは体内に取り込むと、特定の臓器にたまらず全身に広がるが、カリウムと化学的性質が近似しているため、野菜や海藻、豆類などカリウムを豊富に含んだ食品を一定期間摂取すれば排出できるという。だが同じちりでもストロンチウムは骨に取り込まれ、大量なら白血病の原因となる危険がある。
このほか、原子炉圧力容器などを大きく破壊するメルトダウンの事態に陥れば、プルトニウムが放出される恐れがある。半減期が極めて長く、大きなエネルギーを出すため、臓器や細胞に悪影響を及ぼす。ただプルトニウムは重いため、遠方まで飛散しにくいと考えられている。
日本政府の退避指示評価 WHO、作業員に懸念
2011年3月16日 提供:共同通信社
【ジュネーブ共同】世界保健機関(WHO)は15日、東日本大震災により放射性物質が漏れたとみられる福島第1原発周辺の住民に対し、日本政府が出した退避指示について、専門家の意見に沿ったものだと評価する声明を発表した。
日本政府は同原発から20キロ以内の住民への避難に加え、20~30キロの住民に屋内退避を指示。WHOは現時点で住民に直接の危険はないとしているが、現場で対応に当たる作業員や消防隊員らの健康に懸念を示している。
原発事故の健康被害防止に向け、WHOは40を超える専門機関からなる連絡組織を設置し、さまざまな支援を行っている。
(滋賀)「津波負傷者想定超えた」
2011年3月16日 提供:読売新聞
DMAT帰還
東日本巨大地震で被災地入りしていた県内の医師、看護師らでつくる災害派遣医療チーム(DMAT)の2チームは記者会見で、想定を超えた現場の惨状や治療した患者の様子などについて語った。
大津市民病院(大津市本宮)のDMAT(医師、看護師ら6人)は12日深夜、自衛隊機で岩手県花巻空港入り。13、14の両日に空港格納庫を使い、同県大槌町から防災ヘリなどで搬送された患者に対して処置や治療の優先順位をつける「トリアージ」を施した。
リーダーの小尾口邦彦医師(43)によると、13日は津波にのみ込まれたことによる全身打撲や呼吸不全の患者が多く、14日になると、透析患者ら慢性疾患の人が目立つようになったという。
小尾口医師は「倒壊した建物に挟まれるなどのけがを想定していたが、それ以上に津波による負傷者が大きく、我々の想定を超えていた」と話し、加納正人医師(47)は「規模が大きすぎて、本当に救急医療が必要な人たちにたどり着けなかった。今後は避難所などでの医療、メンタルケアが重要になってくる」と語った。
◇
近江八幡市立総合医療センター(近江八幡市土田町)のDMAT(医師、看護師ら6人)は陸路で、12日朝に被災地入り。同日-13日朝は仙台市宮城野区の仙台医療センターで、同日昼-14日朝には岩手県石巻市の石巻赤十字病院で、いずれも被災現場や近隣の医療機関から搬送されてくる患者にトリアージを施したり、治療にあたったりした。
津波による全身打撲など重傷の患者は1割程度。低体温や脱水などの状態になった人や、身一つで逃げ出したため常備薬を持たずに体調を崩す慢性疾患の患者が多かった。
院内には数多くの安否情報が掲示され、患者を乗せたヘリが到着するたびに「どこから来たヘリですか」などと、身内ではないかを確かめる人もいたという。看護師の一人は「患者も次々と運ばれてくるし、精神的にも肉体的にも、これほど疲れた医療現場は初めてだ」と振り返った。
輸送機で首都圏や北海道に 国が災害医療チームと連携 「大型サイド」負傷者の広域搬送
2011年3月16日 提供:共同通信社
未曽有の大災害となった東日本大震災では「災害派遣医療チーム(DMAT)」と関係省庁が連携し、負傷者を自衛隊の輸送機で被災地外に運ぶ「広域医療搬送」が初めて実施された。阪神大震災などを教訓に訓練を続けた官民一体の取り組み。懸命の救助作業を続けた。
▽特殊部隊
発生翌日の12日。既に暗くなった北海道・新千歳空港の滑走路に、岩手県の花巻空港をたった自衛隊機が降り立つ。重症患者4人にDMATの医師や看護師が付き添い、道内の災害拠点病院へと向かった。
DMATは医師や看護師、事務調整者を含む5人程度でチームを編成。おおむね災害発生後48時間以内に、ライフラインが途絶した劣悪な環境下で、挫滅症候群(クラッシュシンドローム)など特有の外傷に対応するための訓練を受けた「特殊部隊」だ。
地震などの大規模災害の場合、被災地では病院自体が被害を受けるなどして医療態勢を確保できないことが想定されてきた。厚生労働省によると、6千人超が犠牲になった阪神大震災では「被災地外の医療機関で迅速に治療をしていれば、約500人の負傷者は救命できた」との研究報告もあるという。
こうした状況を踏まえ、国が準備を進めてきたのが広域医療搬送だ。DMATを軸に厚労省と防衛省などの関係省庁が連携。厚労省は「自衛隊の輸送機を使って、多くの患者をまとめて被災地外に迅速に運べるのが特徴」と説明する。
今回の震災では、これまでに北海道と東京に計約15人を搬送。「ミッションを実際に運用できた意義は大きい」と同省の担当者。
▽出動200班
DMATが本格的にスタートしたのは2005年。新潟県中越地震を受けて各地に設置され、災害現場などで活動してきた。
「病院のライフラインの機能が下がっている。携帯電話など情報手段もズタズタ。どこに行っても連絡が取りづらいと考えてください」
14日午後、宮城県内のDMATの活動拠点となっている仙台医療センター。秋田から派遣された平鹿総合病院の岩間直(いわま・なおし)・小児科診療科長が、被災現場に向かう隊員の医師らに指示を出した。
内閣府などによると、今回は、茨城、福島、宮城、岩手の4県からの要請で全国から200超のチームが出動し、主に各県の災害拠点病院で活動。中には消防隊とともに壊滅状態の被災地に入り、救出者の初期治療に当たる医師もいた。
▽課題
岩間医師は「大災害時には被災地の状況に関する情報に影響を受け、隊員ごとに重症度の見方が異なることがある。複数の隊員の見解を確認し、症状を慎重に見極めることが必要だ」と話す。
厚労省によると、DMATはあくまで初期対応が目的で、順次撤収していく方向。だが岩間医師は「一人でも多くの人を救出したい。それが隊員のみんなの願いです」。
病院防災が専門の摂南大の池内淳子(いけうち・じゅんこ)准教授は、DMAT参加による広域医療搬送を「画期的。多くの医療従事者を被災地に入れ、負傷者を外に出すことで被災地は助かる」と評価。その上で「今は医療従事者のモチベーションに頼りすぎ。もっと行政や自衛隊が音頭を取るべきだ」とした。
専門知識生かして情報集約 有志公務員が震災サイト
2011年3月16日 提供:共同通信社
東日本大震災の被災者らに役立つ情報を集めたポータルサイト「みんなでつくる震災被災者支援情報サイト」を有志の公務員が15日までに開設した。ネット上にあふれる玉石混交の震災情報のうち、専門知識を持つ公務員の視点で、信頼性が高いと判断した情報を集約しているのが特徴だ。
国や地方自治体の職員、教員ら約千人でつくる「地域に飛び出す公務員ネットワーク」が開設、メンバーの専門分野は防災、土木、食料など幅広い。
サイトは医療、安否確認、インフラなどの項目ごとに、メンバーがネット上で発見した情報を集約。日本語が分からない外国人向けに、英語の堪能なメンバーが翻訳した計画停電などの情報もリンクされている。
サイト運営の中心となっている北海道畜産振興課の今野徹(こんの・とおる)主任は「ガソリンスタンドの営業状況など公的機関が提供しきれない情報を充実させたい。支援の輪は全国に広がっているので、被災者の方は頑張ってほしい」と話している。
携帯電話からもアクセス可能。アドレスは、http://sites.google.com/site/minnadewiki/
http://sites.google.com/site/minnadewiki/
水の摂取、食事が肝心 避難生活「楽しみ忘れず」 阪神大震災経験者
2011年3月16日 提供:共同通信社
東日本大震災で被災した人の避難所生活は長期化が予想される。病気にならないためには十分な水を摂取して小まめに体を動かすことが肝心。精神的に落ち込まないためには小さな楽しみを見つけることも大事だ。長期化すれば食事への配慮も必要になる。阪神大震災を経験した医師や識者にアドバイスを聞いた。
▽赤い尿は危険
「暖を取って、トイレを我慢しないことが重要だ」。阪神大震災時に避難所の救護所で治療にあたった兵庫県災害医療センターの医師小沢修一(こざわ・しゅういち)さん(65)は指摘する。衛生面の問題などでトイレに行くのを嫌がり、水分を取らなかったため心筋梗塞になった被災者がいた。「尿が赤くなると危険のサイン。とにかく水をたくさん飲んでほしい」と訴える。
狭い場所での生活に起因する体の変調も懸念される。同じ姿勢を長時間続けることで足や腕がうっ血。静脈に血栓ができ、心筋梗塞の原因にもなる「エコノミークラス症候群」がよく知られている。
兵庫県西宮市の大学講師出口俊一(でぐち・としかず)さん(62)は避難所が満員で入れず、家族5人が約2週間にわたり小学校の校庭に止めた乗用車内で生活した。
「エコノミークラス症候群なんて知らなかった。疲れはとれないし、死亡する可能性もあったと思うと恐ろしい」と振り返る。小沢さんは「避難所でも、手や足などを小まめに動かすことが大事だ」と警告する。
▽不安感が増大
目の前の惨状にぼうぜん自失になった後、災害の実態が判明するにつれて不安感が増してくる恐れもある。兵庫教育大教授(精神医学)の岩井圭司(いわい・けいじ)さん(49)は「小さな楽しみを大切にしてほしい」と話す。
兵庫県芦屋市で被災した岩井教授は震災5日後に足を運んだ女性歌手のコンサートに勇気づけられた。「自粛ムードが社会を覆い、テレビは災害報道一色になるが、各局が持ち回りでお笑いや音楽の番組を流せば被災者の気持ちも楽になるのでは」と話す。
「テレビゲームばかりしていた子どもが縄跳びやケンケンパーで遊び、その笑顔に癒やされた」。約5カ月間、小学校の避難所運営に携わった神戸市の公務員の男性(50)は振り返る。
避難所では、年長の子どもが紙芝居を作り、小さな子どもに読み聞かせる姿も見られ、その様子を見た大人が励まされることもあった。
中学2年の時に被災し、学校に約半年間避難した神戸市の大学院生井上烈(いのうえ・たけし)さん(30)は「水くみの手伝いなど自分が動くことでストレスが減った。ほかの人のペットを世話するのも楽しかった」と話した。
▽普段の料理を
食事の問題も切実だ。自身も3カ月の避難所生活を経験した甲南女子大名誉教授(食デザイン論)の奥田和子(おくだ・かずこ)さんは「当面はカップ麺や菓子パンなど届けられる物資に頼らざるを得ないが、長期的には被災者の望むものを吟味して送ってほしい」と訴える。
被災者の多くは当時、温かいごはんや煮魚、ホウレンソウのおひたしなどを例に挙げて「普段の家庭料理が最も食べたかった」と話していたという。
奥田さんは「食物繊維やビタミンを補給できる野菜はもちろん、できれば東北の食文化に合わせた炊き出しを提供できるようにしてほしい」と食生活の重要性を強調。「気力、体力が落ちている中での食事の乱れは免疫力を低下させ、病気につながりかねない」とした。
トイレを清潔に保つ 「ポリ袋活用」と専門家
2011年3月16日 提供:共同通信社
災害発生後に直面するトイレ問題。トイレを清潔に保ち、我慢せずに済ませることは、健康を維持するために重要だ。
震災時のトイレ対策に詳しいNPO法人日本トイレ研究所の加藤篤(かとう・あつし)代表理事はポリ袋の活用を勧める。「便器にポリ袋をかぶせて中に新聞紙を入れ、排せつ物を染み込ませたら、口を縛って捨ててください」。臭気があるものなので避難所では1カ所にまとめると良い。
バケツで流せるだけの生活用水が確保できた場合も、注意が必要だ。排水設備や下水道が完全に復旧していないうちに流すと、漏水や汚水があふれる場合も。「排水できるかどうか少しずつ慎重に流してください」。水が不十分だとトイレットペーパーが詰まる恐れもあるので、使用後は流さないで、別に捨てた方がよいという。
避難所では、トイレに行きやすい環境をつくることも重要なポイントだ。一人一人が使い方に気を付けて清潔さを保つことはもちろんだが、「トイレのことを話題にしたり、『一緒に行きませんか』とお年寄りを誘ったりするなど、お互いに声掛けをしてください」と加藤代表理事。
「集団生活の中では、ウイルスや風邪などがあっという間に広がる。忘れられがちだが、使用後の手の消毒やトイレ内外での履物を区別するなど、避難所を衛生的に保つことにも気を付けて」とアドバイスしている。
地震被災地、外国人医師の医療行為可能に
2011年3月16日 提供:読売新聞
政府は16日、東日本巨大地震の被災地で外国人医師の医療行為を認める方針を決めた。
医師法は、日本の医師免許がなければ日本で医療行為ができないと規定しているが、今回は医師法の例外と位置づける。すでにカナダなどが医師の派遣を申し出ており、今後、具体的な調整を進める。
諸外国から被災地支援に派遣された外国人医師が医師法のために医療行為ができない問題は、1995年の阪神大震災で問題となり、当時の厚生省が「緊急避難的行為として認め得る」と自治体に通知して一定の範囲で活動を認めた。今回は、被災範囲が広く、医師不足が生じる可能性が高いことから、外国人医師の医療行為に違法性がないことを明確にして対応する方針だ。
都内でも通常より高い放射線量…健康影響なし
2011年3月15日 提供:読売新聞
東京都は15日、都内で検出される放射線量が通常の約20倍に増え、一時0・809マイクロ・シーベルトに達したと発表した。健康に影響はないという。
都によると、新宿区内にある都健康安全研究センターでの観測結果は、14日まで0・035マイクロ・シーベルト前後で推移していたが、15日は午前10時台に最大0・809マイクロ・シーベルトを記録した。ただ11時台は0・151マイクロ・シーベルトに下がった。過去4年間の最大数値は0・079マイクロ・シーベルトだった。
透析患者に「助け舟」 岩手と宮城から神戸受け入れ 東日本大震災
2011年3月15日 提供:毎日新聞社
東日本大震災:透析患者に「助け舟」 岩手と宮城から神戸受け入れ
日本透析医会は、東日本大震災で大被害を受けた宮城、岩手両県で、人工透析患者への対応が困難になっているのを受け、被災地外での受け入れ準備を始めた。阪神大震災の被災地・神戸で、受け入れ患者が宿泊できる船舶を準備している。
日本透析医学会の統計では、両県の透析患者は約7600人とされる。日本透析医会災害対策部会員の赤塚東司雄医師によると、両県では人工透析が可能な医療機関が24時間態勢で透析患者を受け入れているが、東北地方でも計画停電が検討されており、長期的対応が難しい状況。近隣の福島、秋田、山形、青森各県の医療機関からの情報では、他県からの受け入れは困難という。
兵庫県透析医会や神戸大などは、災害時に透析患者を被災地外に輸送する船を確保しているが、今回の東日本大震災では被災地への着岸ができないため断念。ベッドなどのある神戸大の船を宿泊用に活用するなどし、阪神間の医療機関で400人の受け入れを目指している。患者の搬送方法などは国が調整を進めている。
赤塚医師は「週2、3回の透析ができなければ命の危険に直面する。全力で準備を進めたい」と話している。【内田幸一】
体に触れ、声掛けよう 被災地での心のケア 阿保順子さんに聞く
2011年3月15日 提供:共同通信社
家族や住まい、集落、町の喪失、復興への遠い道のり...。東日本大震災の被災者の心をどのようにケアすることが必要なのか。「体に触れながら話を聞いたり、声を掛けたりすることが大事」と精神看護学が専門の長野県看護大学長、阿保順子(あぼ・じゅんこ)さんは言う。
「人間の心は普段はうれしいことも悲しいことも詰まっているが、被災したときにはうれしかったことが出てしまい、中は悲しみでいっぱいになる」。だから悲しみを外に出すと同時に、うれしいことを外から注入することが必要。「悲しみを出す」とは泣くことで、「うれしいことの注入」はそれを周りの人が受け止めてあげることだという。
受け止め方で大事なのは、「常に体に触れながら」ということ。手を取り合ったり、背中をさすってあげたり...。目を見つめ、うなずきながら話を聴くことも、体に触れるのと同じ効果がある。
その際は同時に、楽しかった過去を思い出させ、未来の時間に思いをはせてもらう。「『昔はこんな楽しいことがあったね。つらかったけど、みんなで乗り越えたこともあったよね』などと声を掛け『未来だっていろいろなことができるのよ、その一つでもできればいいね』と伝えてほしい」
被災に心が耐えられなくなったときに起こりやすいのは、幼子のように「退行」すること。汚れたぬいぐるみやハンカチを手放さない子どもや、いろいろなものをかぶったり、周囲を毛布で固めてしまう高齢者もいるかもしれないが、それは自我を防衛しようとする行動だ。
「一種の防衛本能。そんな汚いものをと言って取り上げては駄目。体に触れながら見守ってほしい。一時的なものです」
徘徊(はいかい)しようとする高齢者は、無理に引き留めず、目の届く安全な場所を歩かせることも必要。「自分の中のまとまりをつけようとする行動。一緒に歩いてもいい」と阿保さんは助言している。
震災避難所 高齢者に配慮
2011年3月15日 提供:読売新聞
簡易トイレ確保/水分、食事しっかり
大勢の被災者が身を寄せる避難所。長引く避難所生活には高齢者などへの気配りが欠かせない(13日午後、宮城県南三陸町で)=大野博昭撮影 東北地方を中心に甚大な被害を及ぼした東日本巨大地震。避難生活が長引くことが予想され、特に高齢者や持病がある被災者にとって、体調管理が極めて重要になる。
阪神大震災で被災者を受け入れた福祉関係者や識者らは、「避難所を運営する人や、周囲の人たちが気配りを」と話し、状況を見守っている。
運営する施設で多くの被災高齢者を受け入れた兵庫県尼崎市の社会福祉法人「きらくえん」の市川禮子(れいこ)理事長は、「お年寄りにとって、避難生活でつらいのはトイレの問題」と指摘する。阪神大震災の避難所では、たびたび用を足すため立ち上がって周囲に迷惑をかけないよう、高齢者が、トイレに近い入り口付近に固まっている姿を見かけた。
入り口は風が吹き抜ける場所が多く、長く過ごしていると、風邪や肺炎を引き起こしかねない。「避難所を運営する人は、ポータブルトイレを用意し、周囲から見えないようにカーテンなどで隠すなどの配慮をしてほしい」と呼びかけている。
「震災下の『食』」などの著書がある甲南女子大名誉教授の奥田和子さん(食デザイン学)も、高齢者が周りに気を使いすぎることの弊害を指摘する。
避難所で、トイレを我慢するため、水分を控える人が多かった。奥田さんは「限られた空間で同じ姿勢をとり続けたうえ、水分が不足すると、命取りになりかねない」と強調する。静脈に血栓がたまり、エコノミークラス症候群を引き起こしやすくなるからだ。意識して体を動かし、こまめに水分補給をしてほしいという。
また、震災直後は、食欲がなくなる被災者が目立ったという。奥田さんは、「体力を落とさないためにも、できるだけ食事を取ってください」と訴える。まだ寒いなか、体育館などで集団生活をしていると、インフルエンザや風邪などの感染症が広がる恐れもある。予防のためにも、しっかり食べ、体力を維持することが重要だと強調する。
要介護者や高齢者らには、おかゆや流動食など喉を通りやすい食べ物が望ましい。炊き出しなどを通じて出される温かい食べ物を食べると、体が温まるだけでなく、気持ちもやわらぐ。「行政サイドで、できるだけ早く対応してほしい」と話している。
避難所でボランティアの受け入れにかかわった元流通科学大教授、塚口伍喜夫(いきお)さん(73)(社会福祉学)は、持病のある避難者に「どのような配慮を必要としているのかを、周囲に伝えてほしい」と呼びかける。阪神大震災当時の避難所では気後れして、病気について話せない人が多いと感じた。「適切な措置を受けられなければ、命に関わる。勇気を出して」と力説する。
一方、人工透析などの処置や、投薬をどこで受けられるのかといった情報も、極めて重要だ。塚口さんは「行政や医療機関は、積極的に避難所などに伝えて」と提言している。
きっと立ち直れる 香山リカのココロの万華鏡
2011年3月15日 提供:毎日新聞社
香山リカのココロの万華鏡:きっと立ち直れる /東京
これを読んでいるあなたは、無事だろうか。
安全な場所にいるのだろうか。
どうしたらいいかわからない、と途方に暮れている人、パニック状態に陥っている人もいるだろう。
眠れない日が続き、動悸(どうき)やめまいなど、からだの症状に苦しんでいる人もいるはずだ。不自由な生活を送りながら、不安で泣いている人もいるのではないか。
私は、これまで診察室で、どん底の状態にあると思われる人、事故や事件に巻き込まれて混乱する人を大勢、見てきた。「もうダメだ」と頭を抱える人、「生きていけない」と泣きわめく人もいた。
しかし、どの人も、みんな立ち直っていった。時間はかかったが、絶望やどん底からはい上がっていった。
「奇跡の回復」を何度も何度も、私は診察室で見てきた。回復の底力は、誰にでも、何歳の人にでも備わっているのだ。
そのとき、心がけておくべきなのは、次のようなことだろう。
あわてずに、「大丈夫」「ゆっくり」と自分で自分に声をかけて、気持ちを落ち着かせる。できるだけからだを休める。眠れなくても、座ったり何かによりかかったりするだけでもいい。食べものがあれば、食欲がなくてもとにかく口に入れる。まわりの人と声をかけ合い、必要なときは、遠慮なく助けを求める。
そしていちばん大切なのは、「きっと立ち直れるはず」と自分を信じ、周囲の人たちを信じることだ。どんな状況でも、決して諦めてはならない。いや、諦める必要はない。
これは、個人に何か起きたときの場合だが、地域でも国でも同じはずだ。
これまで私たちは、力を合わせてさまざまなむずかしい局面に立ち向かい、乗り切ってきた。
どんな状況からも、必ず立ち直れる底力を持っている。それが、人間であり、人間が作る社会なのだ。
自分を信じよう、自分たちを信じよう。そして、助け合い、支え合おう。できることをひとつひとつ、やっていこう。必ず希望はあるはずだ。
医療機関から被害報告なし 計画停電の4県で厚労省
2011年3月15日 提供:共同通信社
厚生労働省は14日夜、東京電力による計画停電が行われた茨城、千葉、山梨、静岡の4県から医療機関で停電による事故などの被害報告がなかったことを明らかにした。在宅療養中の患者が人工呼吸器など医療機器を使用できないことに伴うトラブルの報告もなかった。
厚労省では医療機関や医療機器メーカーなどに事故が起きた場合は県に報告するよう求めていた。
工業用酸素ボンベ代用可 厚労省、治療用が不足
2011年3月15日 提供:共同通信社
厚生労働省は14日、被災地で患者の治療に使う医療用酸素ガスボンベが不足していることを受け、やむを得ない場合は患者への説明などをした上で、工業用ボンベを使うことを認めると、都道府県に通知した。
工業用ボンベは通常、工場での溶接作業などに使い、治療への使用は認めていない。だが宮城県の要請を受け、治療に使っても患者の容体に影響がないため、特例として認めた。
通知では、取り違えを防ぐため、酸素以外の気体の工業用ボンベを使わないことなどを条件としている。
母子手帳なくても健診 厚労省、都道府県に通知
2011年3月15日 提供:共同通信社
厚生労働省は14日、東日本大震災で被災した妊産婦、乳幼児について、母子手帳を紛失したり、居住地を離れている場合も、避難先で健診などを受けられるように配慮するよう全国の都道府県などに通知した。避難所生活の長期化に備えた措置。
また日本医師会や日本産婦人科医会などの関係団体に、被災により妊婦が流産や早産になる可能性が高まったり、乳幼児が栄養低下や情緒不安定などになりやすくなるとして専門的、長期的な支援を要請した。
遺体埋葬「対応急ぐ」 中野国家公安委員長
2011年3月15日 提供:共同通信社
中野寛成国家公安委員長は14日の記者会見で、東日本大震災の犠牲者の遺体の保管や埋葬について「阪神淡路大震災を参考に対応を急ぐ必要がある」との認識を示した。
警察庁によると、同日午前までに収容された遺体は約1600人。検視を終えた約1180人のうち、約500人の身元が確認されたが、遺族に引き渡されたのは約150人にとどまっている。
身元が確認されても遺族が所在不明だったり、遺族が避難所におり、遺体を引き取れないケースも少なくないという。
厚労省は同日、阪神淡路大震災と同様に、墓地埋葬法に基づく許可証なしで弾力的に埋葬を認める方針を決め、都道府県に通知した。
今後、犠牲者が増えて遺体安置場所が確保できなくなれば、身元や遺族の所在が未判明でも、自治体の判断で埋葬することになる。
中野委員長は「DNAや歯型など、後々検証できるものを保存、記録して(埋葬の)措置を取らざるを得ない」と述べた。
被ばく検査態勢強化 人員確保が課題
2011年3月15日 提供:共同通信社
福島県災害対策本部は14日、福島第1原発の事故を受け、被ばくの有無を調べる検査態勢を15日から強化する方針を確認した。
医師や看護師のチームを県や国で180組以上作り、県内約500カ所の全避難所で希望者全員が検査を受けられるようにする考え。医師らの人員確保が課題で、チームの早急な派遣を国に求めている。
同本部によると、(1)原発事故に伴う避難指示の対象者が約8万人となり、受け入れ先が拡大している(2)放射能は見えないため不安に思う住民が多い-ことから、全避難所での検査を目指し、国と協議してきた。
県担当者は「医師らのチームは県で80組つくり、国には100組以上の派遣を求めているがいずれも足りない。全避難所への常駐は難しく、規模に応じて巡回で対応したい」と話している。
検査で基準以上の放射能汚染を確認した場合は、県内の拠点で全身を洗い流す「除染」をする。
透析患者に「助け舟」 岩手と宮城から神戸受け入れ 東日本大震災
2011年3月15日 提供:毎日新聞社
東日本大震災:透析患者に「助け舟」 岩手と宮城から神戸受け入れ
日本透析医会は、東日本大震災で大被害を受けた宮城、岩手両県で、人工透析患者への対応が困難になっているのを受け、被災地外での受け入れ準備を始めた。阪神大震災の被災地・神戸で、受け入れ患者が宿泊できる船舶を準備している。
日本透析医学会の統計では、両県の透析患者は約7600人とされる。日本透析医会災害対策部会員の赤塚東司雄医師によると、両県では人工透析が可能な医療機関が24時間態勢で透析患者を受け入れているが、東北地方でも計画停電が検討されており、長期的対応が難しい状況。近隣の福島、秋田、山形、青森各県の医療機関からの情報では、他県からの受け入れは困難という。
兵庫県透析医会や神戸大などは、災害時に透析患者を被災地外に輸送する船を確保しているが、今回の東日本大震災では被災地への着岸ができないため断念。ベッドなどのある神戸大の船を宿泊用に活用するなどし、阪神間の医療機関で400人の受け入れを目指している。患者の搬送方法などは国が調整を進めている。
赤塚医師は「週2、3回の透析ができなければ命の危険に直面する。全力で準備を進めたい」と話している。【内田幸一】
日医工がヨウ素剤供給
2011年3月15日 提供:共同通信社
福島第1原発で爆発事故が続いたのを受け、後発医薬品大手の日医工(富山市)は14日、放射線障害の予防用に使うヨウ素剤約25万人分を福島県の医薬品卸会社に発送したと発表した。
日医工の在庫は約80万人分あり、緊急事態に備えて増産も進める。
(m3.com編集部注:)
・ヨウ素を含む消毒剤などを飲んではいけません-インターネット等に流れている根拠のない情報に注意-(PDF) - 独立行政法人 放射線医学総合研究所(2011/3/14)
・原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について(PDF) - 原子力安全委員会(2002/4)
・緊急被ばく医療のあり方について(PDF) - 原子力安全委員会(2008/10改定)
・原子力災害時におけるメンタルヘルス対策のあり方について(PDF) - 原子力安全委員会(2008/10改定)
検案医が不足、派遣要請 日本医師会が対応検討
2011年3月15日 提供:共同通信社
東日本大震災で未曽有の犠牲者数が明らかになる中、被災地では死因を判断するため遺体を検案する医師が不足し、仙台市医師会(仙台市若林区)は14日までに他の政令市などの医師会に派遣を要請した。
岩手、宮城、福島など各県の医師会も同様の問題を抱えており、日本医師会は全国から医師を集めて被災地に派遣することも含め、具体策の検討を始めた。
仙台市医師会は全国14の大都市の医師会と、災害発生時の医師の相互派遣などについて支援協定を結んでおり、12日に検案医の派遣を要請。横浜市、名古屋市などの医師会から派遣された数人が仙台市内の遺体安置所で活動している。
災害時の検案は警察官の立ち会いのもとで、医師が圧死や溺死、焼死などの死因を迅速に判断する。監察医などの専門医でなくても医師免許があれば可能で、現地では1人が1日100人前後の遺体をみている、という。
仙台市医師会の瀬野幸治(せの・こうじ)救急災害担当理事は「仙台市内の死者数は今発表されている数をはるかに上回っており、医師は不足している。電気も水道もない中での過酷な作業で、2泊3日のローテーションで回している」と話している。
全国の歯科医に派遣要請 身元確認でDNA鑑定も
2011年3月15日 提供:共同通信社
日本歯科医師会(日歯、大久保満男(おおくぼ・みつお)会長)は14日、東日本大震災の犠牲者の身元を確認するため、全国の都道府県歯科医師会に対し、歯型照合を行える歯科医を被災地に派遣するよう要請した。今後、犠牲者数が増加する可能性が高いことから、日歯では、日航ジャンボ機墜落事故(1985年)での派遣規模を上回り過去最大になりそうだとしている。
遺体の身元確認には、歯の治療痕などを生前のカルテと照合することが有効。しかし今回は現地の歯科医も被災し、カルテが紛失した例も多いとみられ、日歯では「口腔(こうくう)から採取した粘膜によるDNA鑑定も試みたい」としている。
日歯によると、被災地では既に岩手県の歯科医8チームが活動中で、15日朝までに東京、千葉などの歯科医11人が到着予定。
情報迷走に病院不満 発電燃料、確保に奔走
2011年3月15日 提供:共同通信社
東京電力の計画停電をめぐる情報迷走で、対象とされた地域にある病院は14日、情報収集と停電に備えた対応に追われた。準備が遅れれば患者に大きな影響を与えるだけに「対応が遅すぎる」と不満の声が上がった。
東京都荒川区の「東京リバーサイド病院」。13日夜の東電発表では、同区は停電の対象に。情報収集の結果、病院の所在地域は対象外と分かったが、今後の停電に備えて14日早朝から非常電源用の燃料確保に奔走した。
その時点では、手持ちの燃料で可能な自家発電は3時間程度。停電が長引くと、急患への対応やエレベーターでの患者移動、入院患者への食事提供などに響く。出産を控えた妊婦もおり、関連施設の協力を得て「なんとか2日分をかき集めた」(春原捷敏(すのはら・かつとし)事務長)。
この日は診療態勢を縮小し、玄関には停電の可能性に触れた張り紙をして、患者の理解を求めた。春原事務長は「停電はないから大丈夫と、患者に言い切れないのがもどかしい。東電は情報提供をしっかりしてほしい」と、注文を付けた。
約2500の病院が加盟する日本病院会では、厚生労働省の通知をホームページに掲載するなどしたが時間が足りず、個々の病院の実情は把握できていない。「鉄道の運休などで医師や職員が出勤できているのかも懸念材料だ」とする。
厚労省の大塚耕平副大臣は「自家発電装置が立ち上がらないから何とかしてください、では困る」と、病院側に自助努力を求めている。
家族の無事信じ治療 若手医師「やるしかない」 救命のとりで、大船渡病院 「濁流 町が消えた」
2011年3月15日 提供:共同通信社
連絡が取れない家族の無事を信じ、「やるしかない」と患者の治療を続ける若手医師。持病を抱えるお年寄りは「ここが残って本当によかった」。救命救急センターを併設する岩手県立大船渡病院(大船渡市)。停電、医薬品不足、極限状態のスタッフの疲労...。さまざまな困難に直面しながら救命の「最後のとりで」として24時間診療を続ける。
地震から4日目の14日午前9時。ロビーは300人以上の患者であふれかえった。さらに受付には50人近い人が並ぶ。市内のほかの病院は壊滅状態。医療器具を滅菌する機械は故障したままで、予定していた手術は全て延期となった。
研修医の山下晋平(やました・しんぺい)さん(28)は一関市に住む両親や、仙台市の兄と連絡が取れないまま、患者の治療を続ける。
骨折の手術中だった11日午後2時46分、大きな揺れに襲われた。余震も続く中、スタッフ7人で患者と医療機器を押さえながら、午後6時までかけて手術を乗り切った。
スタッフは約400人態勢で3交代のシフトを回す。食事はカップ麺や栄養補給用の携帯食ぐらいしかない。疲労はピークに達しているが、山下さんは自らに言い聞かせるように語った。
「家族のことを考える余裕はなく、大丈夫だと信じている。患者さんは次々と押し寄せてくる。ひたすらやるしかない」
急患のほか、持病で通院するお年寄りも多い。池津和義(いけつ・かずよし)さん(84)は呼吸器系と前立腺の病気があり、症状を抑える薬を受け取りに来た。「これがないと死んでしまう。この病院が残っていて本当によかった」とほっとした顔を見せた。
同病院の村田幸治事務局長によると、地震直後から停電となり、自家発電を続けてきた。燃料の重油は数日分しかなかったが、13日夜に電気の供給が再開され、危ういところで病院の機能停止は免れた。だが、輸血用血液や医薬品のストックは底を尽きかけており、物資の確保が大きな問題となっている。
約450人いる入院患者向けの食料は14日にほぼなくなった。15日以降はわずかに残る米と、実家が農業をしているという職員数人が野菜を持ち寄ってしのぐしかない。
「明日なくなるかもしれない薬だってある。何もかもが足りない」。村田事務局長は窮状を訴えた。
[災害医療] 厚労省の被災者への対応とDMATの活動状況等を整理
2011年3月14日 提供:WIC REPORT(厚生政策情報センター)
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震について(3/14)《緊急災害対策本部》
政府が3月14日に発表した、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に関する資料。これは、政府の緊急災害対策本部および原子力災害対策本部が、今回の一連の地震・津波と被害の概要、付随する福島原子力発電所事故の概要、政府の対応についてまとめたもの。
このうち、厚生労働省の対応について主なものをあげると、(1)要介護者等に関して、実態把握に努めること、介護サービス事業者等に対する協力依頼、介護保険施設等の施設・設備基準等に関する柔軟な取扱い、利用者負担の減免(2)後期高齢者医療制度被保険者に係る一部負担金の減免および保険料の取扱い(3)国保において、保険者の判断により、一部負担金、国保料(税)の減免および徴収猶予等(4)健保において、保険者の判断により一部負担金の減免等および、保険料納付期限の延長(5)被災者が被保険者証を保険医療機関に提示できない場合においても、受診を可能とする(6)公費負担医療を受けている被災者が、医療機関において手帳、患者票等の提出ができない場合においても受診を可能とする(7)支払基金に対し、前期高齢者納付金等の納付猶予を必要とする保険者の把握等など(p44-p46参照)。
また、DMAT(災害派遣医療チーム、Disaster Medical Assistance Teamの略、ディーマット)の状況については、3月13日の15時10分現在で、福島県立医大病院で18チーム、仙台医療センターで46チーム、いわて花巻空港で57チームなどが活動中であることが報告されている(p46参照)。
許可証なくても埋葬認める 厚労省、都道府県に通知
2011年3月14日 提供:共同通信社
厚生労働省は14日、東日本大震災の犠牲者の遺体埋葬について、墓地埋葬法に基づく許可証がなくても、弾力的に埋葬を認める方針を決め、都道府県に通知した。
厚労省によると、通常は許可証がなければ遺体の埋葬などは認めないが、自治体が被災地の状況に応じて判断し、埋葬を認めることにする。
1995年の阪神大震災でも同様の対応が取られた。厚労省は、被災地の状況に応じてさらに柔軟な対応策を検討するとしている。
被災地では犠牲者が多数に上り、遺体の埋葬手続きを進めないと衛生上の問題が起きる恐れがあるため、自治体から柔軟な対応を求める声が上がっていた。
代替機器の貸し出し要請 在宅医療患者対策で
2011年3月14日 提供:共同通信社
厚生労働省は13日、「計画停電」の実施が決まったことを受け、在宅医療を受けている患者が医療機器を使用できなくなる事態を想定し、停電の対象地域となる9都県の知事に対し、代替機器の貸し出しなどについて協力を要請する方針を決めた。
在宅時の医療機器の使用が不可能な場合、医療機関に一時的に受け入れてもらうことも検討する。自家発電機を所有する医療機関については、機器の点検や燃料の確保も要請する。
細川律夫厚労相は電力需給緊急対策本部の会議後、記者団に「人工呼吸器を使って治療している方が特に問題になる。徹底してやっていきたい」と述べた。
「薬、水、食料を」 被災地病院に募る危機感
2011年3月14日 提供:共同通信社
地震による停電などで大幅に機能が低下した被災地の病院には、けが人や体調を崩した人だけでなく、避難住民も詰め掛けた。一夜明けた12日になっても、十分な治療ができない上、物資が早期に底をつく恐れも。関係者は切実な声で「薬、水、食料を早く届けてください」と訴えた。
仙台市宮城野区の東北厚生年金病院には、約400人の入院患者のほか、近隣住民も多数避難。地震発生直後から近隣住民のために会議室などを開放したが、収容しきれず、廊下に横たわる人も。一夜明けた12日には親族らの安否を尋ねる人が多数詰め掛け、混乱が続いている。
自家発電用の燃料は2日分しかなく、人工呼吸器などが使えなくなる事態も懸念される。同病院元事務局次長の保志豊(ほし・ゆたか)さん(61)は「患者の命にもかかわる。どうか早く届けてください」と支援を求めた。
千人以上の入院患者を抱える東北大病院(青葉区)は12日朝、電気が復旧。職員は「手術室は確保しているが、水道が止まっており、対応できる場合とできない場合がある」と話した。
福島市の福島赤十字病院も自家発電と給水タンクでしのぐが、入院患者にとっては不都合が多い。それでも「家より病院にいた方が安全」と外泊から送り返す患者の家族もいる。巡回を増やし「大丈夫だからね」と言って落ち着かせるようにしているという。
岩手県立遠野病院(遠野市)は停電のため、電気は自家発電で対応しているが手術室は使えず「電力に限りがあるため、事務室に暖房は使えない」とし、職員はコートを着たまま仕事をしている。
青森県八戸市南郷区の避難所に詰めていた市職員によると、11日午後に、母親に連れられた生後3日目の男児が避難所に到着した直後に脱水症状で入院。母親は、病院から十数キロ離れた避難所に残している2歳と1歳の姉妹の面倒を見るために、男児とは離れるしかなかった。
「まるで野戦病院」 薬剤、燃料不足が深刻化 被災地の医療事情
2011年3月14日 提供:共同通信社
病室に入りきれず廊下に横たわる患者。ホールで診察する医師―。東日本大震災で被災地周辺の病院は、続々と搬送されるけが人への対応で混乱が続いている。薬剤や自家発電用の燃料が不足する状況に、関係者は「まるで野戦病院」。医師や看護師らは不眠不休で治療にあたる。
▽崩壊
ストレッチャーで運ばれる被災者に、スタッフが必死の表情で励ましの言葉をかける。患者を乗せ舞い降りるヘリコプター。多くの患者が玄関の外に、すっかり弱った様子で座り込んでいた。
地震の発生から2日たった13日午後、救出された住民でごった返す石巻赤十字病院(宮城県石巻市)に足を運んだ。
搬送者は千人以上。「被災で周辺地域の医療は崩壊した。ここが最後のとりで」。企画調整課の阿部雅昭(あべ・まさあき)課長(51)が悲痛な表情で訴えた。
院内に入りきれない人のために、玄関の外に仮設の大型テントが設置され、寒さをしのぐお年寄りであふれている。若い男性自衛隊員が、高齢の女性をおぶって小走りで病院内に駆け込んでいった。
▽悪夢
患者で目立つのは、外で長時間孤立するなどして、救出までの寒さから低体温症にかかった人たちだ。衰弱は激しく、地震直後のショックが抜けきらない人も多い。
石巻市の主婦日野(ひの)よし子さん(63)は、娘が運転する車で、襲いかかる悪夢のような大津波からぎりぎりで逃げ切った。「ハンドルを握る娘の手がブルブルと震えていた。娘と死ねるなら、水に漬かっても仕方ないと思った」
救助活動中に津波に遭遇し、足を骨折した30代の男性消防職員も「津波にのみ込まれた時には死を覚悟した」と声を震わせる。
救出者を乗せたヘリが病院横の空き地に着陸。上空では既に次の患者を乗せたヘリが降りる順番を待っている。「今はまだ医療機関として持ちこたえているが、今後はスタッフも医薬品も足りなくなる。この現状を被災地以外の人に知ってもらいたい」と阿部課長。応援を取ろうにも、周囲の開業医の多くが被災し連絡がつかないという。
▽優先順位
増え続ける患者に対応するため、治療に優先順位を付けるしかない状況になる病院も出始めた。
宮城県南部のみやぎ県南中核病院(大河原町)。大きな被害が出た名取市からは約20キロの距離にある。11日の地震発生後、愛知県警や山形県の防災ヘリコプターで運ばれた患者は600人近く。玄関付近では重症に赤、中症に黄、軽症には緑のタグを付け、医師は重症者から治療している。
収容スペースが不足し、低体温症の患者には廊下に敷いたマットに横になってもらっている。マットの上には電気毛布とタオル。停電のため自宅で酸素吸入器が使えない低肺機能症の患者も20人程度おり、吸入器を使用するためリハビリ室の電源を充てている。
▽迫る限界
「患者の受け入れ可能」と判断した病院でも停電が相次いでいる。大半が重油を使った自家発電でしのいでいるが、燃料が底をつく恐れが現実化する。
津波で大きな被害を受けた同県塩釜市にあり、自家発電で対応にあたる坂総合病院。自衛隊のトラックで十数人単位で患者が運び込まれるが、関係者は「燃料はあと4日分しかない」。仙台赤十字病院の関係者は「あと1日半分しか残っていない」
薬剤不足も深刻。みやぎ県南中核病院は既に製薬会社から補充されているが、坂総合病院は「3日分だけ」(担当者)と切実な状況だ。
孤立住民1万人以上か 全容不明、進まぬ救助
2011年3月14日 提供:共同通信社
津波による浸水や道路の寸断で救援隊が入れない地域の被災者孤立が続く。地震発生から4日目。食料や水も不足し、早急な支援が求められているが、全容は今も不明のまま。共同通信の集計では1万人以上が取り残されているとみられる。
自衛隊や総務省消防庁、各自治体などによると、宮城県では、石巻市立病院が4階部分しか残っておらず、医師や患者が救助を求めた。
東松島市の宮戸島は、陸と結ぶ橋が流された。小学校に子どもやお年寄りらが避難し、ヘリで物資を運んでいるが、健康状態が悪い人も出ているという。
仙台市若林区の特別養護老人ホームは、周囲の道路が流木でふさがれ、食料や燃料が枯渇している。
岩手県でも多くの住民が救助を待っている。
大槌町では町立小学校や寺などが孤立。山田町では船越半島や、大浦地区で取り残された。
釜石海上保安部は2階まで冠水。釜石市の小、中学校や防災センターでも孤立者が多数いるという。
救助に当たっている陸上自衛隊東北方面総監部の担当者は「ヘリコプターの数は限られているが、孤立している住民があまりにも多い。お年寄りや子ども、病気がある人ら比較的弱い立場の方々を優先的に救助していく」としている。
「はよ、山に上がれ」 とっさの判断、命つなぐ
2011年3月14日 提供:共同通信社
津波に襲われ壊滅状態となった岩手県大槌町。加藤宏暉(かとう・こうき)町長を含め多くの住民の安否が分かっていない。町の中心部をのみ込んだ大津波。この町でも、救えなかった多くの命がある。奇跡的に難を逃れた住民は憔悴(しょうすい)しきった様子で当時のもようを語った。
「はよ、山に上がれ」。海岸沿いの水産加工会社で勤務していた荻野貴紀(おぎの・たかのり)さん(40)は地震直後、社長の大きな声を耳にした。近くの高台を目指し、300メートルほどの坂道を駆け上った。
大きな水の壁が堤防をあっという間に越えて迫ってきた。坂道の下の方にいた人が次々と水にのまれていく。女性の叫び声がした方に目をやる。「高校生くらいの女性が助けを求めていたが、引き波にのまれてしまった」。なすすべもなかった。
町の中心を流れる大槌川の河口から約1キロにある県立大槌病院。地震直後、院内には職員と患者計約100人がいた。病院脇を流れる川がみるみる増水していく。誰かが叫んだ。「津波が来る」
津波が迫ってくるのが窓から見えた。岩田千尋(いわた・ちひろ)院長(64)ら職員は患者と屋上に避難。自力で逃げられない患者約30人は職員たちが運び上げた。3階建ての病院は2階部分まで水没したが、全員が無事だった。
夜には流されてきた車や船が燃えて、辺りは火の海に。爆発音が何度も聞こえた。水浸しになった2階部分から職員がパックのおかゆを見つけてきた。避難した患者たちは一口ずつ分け合って救助を待った。
岩田院長は「この世の終わりのような光景だった。家を失い、家族の安否も分からない職員もいたのに、よく頑張ってくれた」と話した。
往診中に津波押し寄せる 「濁流、あっという間」
2011年3月14日 提供:共同通信社
7メートルを超える津波を観測した福島県北部の相馬市。約5キロ内陸まで押し寄せた濁流には、数百棟の家屋がのみ込まれたとの情報も。市内の病院は負傷者の受け入れ態勢を整えるが、救急車が被災者にたどり着けない状況。「あっという間に水が流れてきた」。開業医の早川知彦(はやかわ・ともひこ)さん(50)の医院には、数百メートルの距離まで津波が迫った。
早川さんは医院にいたときに地震にあった。28人が犠牲になった1978年の宮城県沖地震に加え、95年の阪神大震災でも神戸市内で被災した。「揺れは阪神の方がすごかったが、今回はゆらゆらと長かった」
普段往診している一人暮らしの高齢者の様子が気になり、車で見に行った。高台に住む寝たきりの80代の女性にけがはなかったが、往診の間に周囲の水かさが上がってくるのが見えたため、毛布にくるんで医院に避難させた。
消防からは救急患者の受け入れを要請されたが、「救急車が走っていない。現場に近づけない」。道路が寸断され、市役所も人的被害を把握できていない状態。医院にも家族と連絡が取れていない職員がいるという。
「相馬市の被害は相当ひどいのではないか」。早川さんは11日夜、夜通しで患者を受け入れると話した。
(宮城)流された消防士、生徒が救命…南三陸・戸倉
2011年3月14日 提供:読売新聞
交代で体温め意識回復
東日本巨大地震の発生から3日目の13日。県内各地で懸命の救助活動が続いた。しかし、時間がたつほどに被害は拡大し、全容がいっこうにみえそうもない。想像を超える大惨事の中で、救われた命もあった。
◇救急講習で面識◇
町民1万人が不明とされる南三陸町。町立戸倉中学校の生徒らが、大津波にのみ込まれた男性消防士を救助し、一命を取り留めた。生徒たちは先月、消防士から救命活動を教わっていた。
南三陸消防署当直司令の及川淳之助さん(56)は地震発生時、壊滅的な被害が出た同町志津川にある消防署2階にいた。気付くと窓越しに水の壁が迫っていて、次の瞬間、津波の中に投げ出された。
山の奥の方まで流され、引き潮で沖まで戻された。数キロにわたり浮き沈みを繰り返した。「助けてけろ」と声を絞り出した直後、記憶がなくなった。
打ち上げられたのは、消防署から南に約4キロ離れた戸倉地区だった。住民らに高台にある機械加工会社に運び込まれた。救助には会社に隣接する戸倉中の須藤翔也君(14)ら生徒が、大人に交ざって加わった。及川さんは2月下旬、この中学で行われた救急救命の講習に付き添いで訪れていた。
意識はなく、危険な状態だった。体が冷え切り、小刻みに震えていた及川さんに、生徒らは服を脱いで半袖短パン姿になると、及川さんを温めるため、交代で体を密着させた。
「こんなことで死ぬんじゃない」。用務員の佐々木房江さん(56)が頬をたたいて呼びかけると、及川さんは意識を取り戻した。
及川さんの講習を受けていた須藤君は「なんとかしたい一心だった」と話した。自力で歩けるまでに回復した及川さんは、「助けてもらった命。何らかの形で恩返ししたい」と目を赤くした。
学校には、亡くなった先生や住民とみられる数人の遺体が残る。佐々木さんは「生徒たちの目の前で、命を落としたお年寄りがいた。生と死を突きつけられ、子どもたちが必死になってくれたおかげ」と話した。
「俺と同じだ。大丈夫だから」
13日朝、及川さんは、同じように津波に流されて救出されたお年寄りに声をかけた。自力で歩けるようになったものの、まだ体のあちこちが痛む。それでも「ここで助けられたのも、漂い着いたのも何かの運命」と、お年寄りらの救護や避難者の身元確認などに追われていた。 (平山一有)
負傷者治療に広域体制 阪神大震災教訓に整備
2011年3月14日 提供:共同通信社
6千人以上が犠牲になった1995年の阪神大震災後、国は広範囲に被害が及ぶ大災害が発生した際の医療体制の整備を進めた。災害拠点病院の指定や、被災地に入る災害派遣医療チーム(DMAT)のシステム構築などだ。
災害拠点病院は、24時間救急対応でき、ヘリコプターで重症者の受け入れ、搬送ができる設備を持つことや、ヘリに同乗する医師がいることなどが条件。厚生労働省によると現在、全国に609病院ある。
DMATは、米国の全国災害医療システムを参考にした。専門的な訓練を受けた医師、看護師らのチームを医療機関の単位で構成し、事前に登録。被災地の災害拠点病院に緊急出動し、救命活動に加わる。自給自足が原則だ。
現在、全国430の医療機関に計818チームあり、今回の地震では12日午後現在、岩手、宮城、福島、茨城各県などに向け約290チームが出動した。
阪神大震災では、被災地の外の病院に搬送すれば救命できたと考えられる死者が約500人いたとの報告があった。この「避けられた死」の教訓から、被災地の病院で治療するのではなく、ヘリなどで遠方の病院に移して治療する広域的な対応の仕組みも作られた。
被災地入りしたDMATは、重症度を基にヘリで運ぶ患者を判断する活動も。厚労省によると、12日は自衛隊機を使い、花巻から千歳、福島から羽田の各空港へと計7人の患者を運んだという。
災害医療に詳しい帝京大の福家伸夫(ふけ・のぶお)教授は「被災地だけがてんてこ舞いになるのでは駄目。国が的確な指揮をしてヘリや救急車を効率良く運用し、患者を被災地の外に搬送して負担を分散させることが重要だ」と話す。
3号機でも水素爆発 11人けが、骨折も 「格納容器は健全」 住民に屋内退避要請 福島第1原発
2011年3月14日 提供:共同通信社
経済産業省原子力安全・保安院によると、14日午前11時すぎ、東京電力福島第1原発3号機で水素爆発が発生した。東電によると、11人が負傷。防衛省によると、自衛隊員らが骨折などのけがをしているという。原子炉圧力容器や原子炉格納容器は健全と確認したとしている。枝野幸男官房長官は「放射性物質が大量に飛び散っている可能性は低い」と述べた。
保安院は同原発から半径20キロ以内の住民ら約600人に屋内退避を呼び掛けた。同原発敷地内の放射線量を測定するモニタリングポストでは、毎時20マイクロシーベルトを計測。急上昇はみられないという。
東電によると、けが人のうち6人は社員4人と協力会社の2人。
3号機では原子炉の水位が低下し炉心の燃料の一部が露出、溶融し、水素爆発の危険性が指摘されていた。1号機では12日に水素爆発が発生、原子炉建屋上部が吹き飛んだ。
東電は14日、1号機と3号機で、炉心を冷やすための海水注入を続行。午前1時すぎ、海水をためる水槽の残量が少なくなったため中断。同3時20分に3号機で注入を再開した。その後、3号機の格納容器の圧力が上昇したため、作業員は所内の緊急時対策室に避難。上昇が止まったため、作業を再開していた。
また総務省消防庁は14日、福島第1原発から放出された放射性物質で被ばくが判明していた病院からの避難患者ら3人から、除染後も汚染の高い数値が検出され、二次被ばく医療機関に搬送されたと発表した。
放射線医学総合研究所広報課は「(放射性物質が体内に入る)内部被ばくが疑われており、除染剤の投与を検討する状況だ」としている。放射性物質の種類によって薬剤の種類や投与方法が異なるため「核種を決定し、対処方法を選択するための検査に向かったのではないか」とみている。
ほかに入院患者らの搬送にかかわった消防隊員3人から、通常の2倍程度の放射線を検出したという。
また東電は同日、福島第1原発の敷地内で放射線量がまた制限値を超えたとして、原子力災害対策特別措置法に基づいて国に緊急事態を通報。
敷地内の2カ所でそれぞれ同日午前2時20分、同40分に、通報基準である毎時500マイクロシーベルトを超える751マイクロシーベルト、650マイクロシーベルトを検出した。いずれも、一般人の年間被ばく線量限度1000マイクロシーベルトに2時間足らずで達する放射線量。同原発周辺では13日にもこれまでで最も高い1557・5マイクロシーベルトが検知されていた。
※緊急被ばく医療
原発の事故などで被ばくした人に対する医療。通常の救急医療などと、被ばくに対する医療処置を組み合わせる。放射性物質による汚染の管理や、医療従事者の放射線防護も必要になる。内部被ばくの場合は、放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積されるのを防ぐための薬や、たんを出しやすくする薬の投与、胃洗浄などを行う。医療体制は、外来診療中心の「初期被ばく医療」、入院が必要な患者を担当する「2次被ばく医療」、さらに専門的な入院治療が必要な「3次被ばく医療」に分かれる。
爆発 空から白い綿、触ると被曝の恐れ
2011年3月14日 提供:読売新聞
原発建屋の断熱材か
東京電力福島第一原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)の1号機原子炉建屋が12日爆発し、避難途中の住民らが被曝(ひばく)したとされる問題で、同原発敷地から3キロ・メートル圏内にある双葉厚生病院にいた男性医師が読売新聞の取材に応じ、当時の様子を語った。
12日午後3時半頃、男性医師は、患者を避難場所へ移送するため、病院玄関前で看護師3人とストレッチャーを押していた。突然、大きな爆発音がし、まもなく白い綿のようなものが大量に降ってきたという。
関係者の話では、壊れた建屋の素材の一部と思われる。一緒にいた看護師の中には、手に取って眺める人もいた。
計20人の患者をすべて二本松市内の施設に搬送した後、改めて振り返ると、不思議な気持ちとともに不安を感じたという。
搬送後に放射線量を計測すると、基準値を上回っていた。その後、あわてて着替えをし、シャワーを浴びたところ、翌日の再計測では正常値の範囲内だった。爆発のあった当日は、他の医師や看護師も放射能を計測。男性医師と同様に基準値を超える人もいたが、そのほとんどは、シャワーを浴びることができなかった人たちだったという。
◇
元京都大原子炉実験所講師の小林圭二さん(原子核工学)は「白い綿は、建屋の素材として使われた断熱材の可能性が高い。ただ、爆発によって放射性物質が付着して飛散した可能性もある。触ると被曝する恐れもあるので、注意が必要」と話している。
がん探知犬 研究者注目 息、便のにおいで判別/物質特定へ世界で競争
2011年3月14日 提供:毎日新聞社
がん探知犬:研究者注目 息、便のにおいで判別/物質特定へ世界で競争
人の息を嗅ぐだけで、がんの有無を判別する「がん探知犬」。世界中で研究が進められており、千葉県内で飼育されている「マリーン」は9割を超す的中率で、医学誌にも紹介された。犬ががんを診断できるようになるのだろうか。【小島正美】
房総半島の南端、千葉県南房総市にある「セントシュガーがん探知犬育成センター」を訪ねた。所長の佐藤悠二さん(64)は真っ黒なラブラドルレトリバーのマリーン(9歳、雌)の頭をなで、「小さい時から嗅覚はずば抜けていた」と目を細める。
佐藤さんは介助犬や水難救助犬などの育成を手がけてきた。マリーンは生後3カ月でブリーダーから購入し、救助犬の訓練を試すうち、優れた嗅覚に気づいた。佐藤さんが食べたものを呼気のにおいだけで当てる。キュウリや大根、ニンジンなど5種の生野菜を一度に食べて息を吹きかけ、岩場にダミーを含め野菜を隠しておく。すると、マリーンは一つ一つ見つけて座り込み、食べた野菜をすべて的中させたという。
九州大大学院消化器総合外科の園田英人助教らは08~09年、福岡、佐賀両県の大腸がん患者の呼気や便のにおいを判別させる実験をした。がん患者のもの1容器と、他の健康な4人のもの4容器を佐藤さんに送付。マリーンに5個の容器から、一つの容器を嗅ぎ分けさせた。
佐藤さんも正解を知らない中、マリーンは一つの容器を嗅ぎ分け、前に座り込んで解答を示した。呼気では36回のうち33回で正解(約92%)、便では38回のうち37回で正解(約97%)だった。実験結果をまとめた論文は今年1月末、英国の著名な医学誌「GUT」に掲載された。
マリーンは、大腸内視鏡や病理組織的検査でやっと分かるごく初期(ステージゼロと1)のがんでも、ほぼ100%判別したという。また、胃がんや乳がんなど別のがんでも、同様の確率で判別に成功している。園田さんは「がんではない良性のポリープには反応を示さず、すごい能力」と驚く。
今後の目標は「マリーンが嗅いでいる、がんに共通するにおい物質の発見」。それが分かれば、呼気だけでがんの有無が分かるセンサーの開発にも結び付く。呼気を成分分析し、個別の物質を抽出してマリーンに再び嗅がせることで、特定を目指すという。
佐藤さんは「がんのにおい物質を突き止められればノーベル賞もの。においでさまざまな病気が分かる『臭診』という分野が確立できたらすごい」と語った。
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がん探知犬の研究は90年代に米国で始まり、米国の研究者が3年前、肺がんと乳がん患者の呼気で、9割以上の的中率を示す論文を発表した。英国でも、ぼうこうがん患者の尿でがんの有無を判別する研究報告が出された。フランスやオーストラリアも含め、世界中の研究者がにおい物質の発見にしのぎを削っている。
獣医師の唐木英明・東大名誉教授は「犬は人間の数万倍もの嗅覚能力を持ち、原因物質が分かれば警察犬のように活躍できる。犬を訓練し、がん患者を見つける事例を重ねることで、信頼度が高まるだろう」とみる。
研究には優秀な犬が欠かせない。マリーンは6年前に病気で子宮を摘出し、子を産めないが、韓国のソウル大学とバイオ関連企業が08年、マリーンの皮膚細胞から4匹のクローンを誕生させた。3匹は韓国で訓練中。佐藤さんがもらい受けた1匹「エスパー」も、後継者として訓練を始めている。
マリーンのような探知犬を全国の病院に配置できれば、がん検診の新たなシステムとなる可能性もあるが、1頭の養成に500万円以上かかり無理だという。
愛犬家でもある「国立がん研究センターがん予防・検診研究センター」の斎藤博・検診研究部長は、飼っていたラブラドルが麻薬探知犬になった経験がある。「今後におい物質を突き止め、数千人規模の健康な人から、がんが見つけられるかが課題だ。愛犬家としてはわくわくする話」と話している。
幹細胞治療 多様な臓器の基になる細胞で根治を目指す。
2011年3月13日 提供:毎日新聞社
医療ナビ:幹細胞治療 多様な臓器の基になる細胞で根治を目指す。
◆幹細胞治療 多様な臓器の基になる細胞で根治を目指す。
◇安易な受診は危険 研究途上で安全性、効果不明 学会、未承認の実施に警鐘
安全性や治療効果が研究途中にある「幹細胞治療」について、日本再生医療学会(理事長、岡野光夫(てるお)・東京女子医大教授)が今年1月末、患者や家族に安易に受診しないよう求める異例の声明を出した。今月2日には学会の全会員に対し、薬事法による承認や保険適用を受けていない幹細胞治療に関与しないよう求める勧告文を発表した。
幹細胞治療は再生医療の大きな柱だ。しかし、その期待感を逆手に、国の承認なしに科学的根拠に乏しい治療が行われている実態があるとして、学会側は危機感を募らせている。治療を検討する前に知っておきたい注意点をまとめた。
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<いつまでも若々しく、健康で元気に過ごしたい方々のための、究極のアンチエージング療法です><ほぼ全ての疾患が適応範囲となります>
国内の一部の民間クリニックでは、ホームページなどでこのようなうたい文句と共に幹細胞治療を標ぼうする。「効果が期待できる」分野として挙がるのは、しわ取りなどの美容目的やリウマチ、糖尿病のほか、パーキンソン病など神経性疾患まで。学会関係者によると、患者自身の脂肪などから採取した「間葉系幹細胞」を使い、注射で投与するなどの手法があり、保険適用されないため、治療費は数十万~数百万円に及ぶこともあるようだ。
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人間の幹細胞の取り扱いに関しては、昨年に改正された国の指針がある。治療法として普及するには、大学の研究者らが指針に沿って行う臨床研究や、企業などが薬事法に基づく治験を経るのが一般的。現在、指針に基づく臨床研究は、心臓病や歯の周りの組織再生など35件が進行し、効果や安全性が確かめられている。
一方、医療現場では、こうした正規の手続きを取らない未承認の治療であっても、「医師の裁量権」を根拠に実施することが認められている。岡野教授ら学会側が懸念するのは後者だ。
八代嘉美・慶応大特別研究助教(幹細胞生物学)は「こうした『幹細胞治療』と称するものが、指針などで定められた正規の手続きを踏んでいるとは考えにくく、細胞の移植法や安全性、インフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)などについても開示情報が不十分だ。日帰り手術などの場合は経過観察やケアが不十分になる恐れもあり、危険性が高いと言わざるを得ない」と指摘する。
また、幹細胞を使った臓器再生の研究に取り組む小林英司・自治医科大客員教授(移植・再生医学)は「医師と患者の双方に、現在の幹細胞治療は研究段階の治療法であることを注意喚起したい」と語る。小林客員教授らは、肝臓の機能回復に幹細胞を利用する動物実験で、ブタの肝臓の血管に、間葉系幹細胞入りの生理食塩水(1ミリリットルあたり10億個)を注射したところ、数日で幹細胞が固まって血管に詰まり、ブタが死んだ例を経験した。「患者自身の幹細胞を点滴する治療が多く実施されているが、厳重な監視下で実施すべき研究段階の治療で、安易な点滴は危険だ」と話す。
それでも幹細胞治療を検討する場合は、国際幹細胞学会(ISSCR)が08年12月、患者向けに発行したハンドブックがあり、再生医療学会もこれを推奨している。ハンドブックでは、医師に尋ねるべき項目として▽その病気に対して一般的に行われている治療法か。他の選択肢はあるか▽過去に臨床研究は行われているか。研究から何が分かったか▽期待できる効果をどのように測定し、どれほどの期間を要するか▽細胞をどのようにして、体内の適切な場所に移植するのか――などを挙げる。
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研究者側は、こうした治療で事故が起きれば、再生医療全体にマイナスのイメージが広がることを危惧する。岡野理事長は「声明は患者に犠牲者が出ないよう憂慮したものだが、再生医療が悪いということではないと強調したい。問題は安全と効果が担保できていない治療。今は注意喚起の段階だが、何とか改善策を示したい」と話し、国と対応を協議する姿勢を示している。【八田浩輔、永山悦子】
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◇幹細胞治療
血液や皮膚、筋肉などさまざまな組織の基になる幹細胞を使い、病気やけがで失われた組織や臓器の働きの再生を目指す治療。従来の治療法では根治できなかった病気などで応用への期待が高まっている。しかし、現段階では有効な治療法として報告されている病気はごくわずかで、多くは研究段階にある。
映画 小児がん細谷医師描く 三重・伊勢進富座で19日上映
2011年3月13日 提供:毎日新聞社
映画:小児がん細谷医師描く 伊勢進富座で19日上映 /三重
40年間にわたってがんの子供たちと寄り添ってきた聖路加国際病院副院長の細谷亮太さんの姿を追った「大丈夫。」が19日、伊勢市曽祢2の伊勢進富座で全国に先駆けて上映される。初日は、公開記念として細谷医師が伊勢真一監督と対談する。伊勢進富座の水野昌光支配人は「命と向き合ってきた細谷医師が生み出す言葉や懸命に生きる子供たちの姿から、さまざまな思いを巡らせてほしい」と話している。
「大丈夫。」は、先に公開された「風のかたち-小児がんと仲間たちの10年」で使用しなかった細谷医師へのインタビューを元に製作された。題名は細谷医師が診察の際に子供たちにかける言葉で、小さな命と向き合い続けてきた細谷医師の姿を通して、生きる意味を問い掛けている。
映画は24日まで、11時半、15時15分、19時45分の3回上映。19日は、16時50分から対談(前売り2500円、上映含む)を開く。問い合わせは、伊勢進富座(0596・28・2875)。【小沢由紀】
〔三重版〕
千佳世は生きる 幸せを感じ続け、31歳。 静かに息を引き取りました
2011年3月14日 提供:毎日新聞社
千佳世は生きる:幸せを感じ続け、31歳。 静かに息を引き取りました
国内に数例しかない難治性のがん「胞巣状横紋筋肉腫」と闘ってきた酒井千佳世さん=京都府宇治市=が12日夜、がん性胸膜炎のため31歳で亡くなりました。
筋肉の中にできた悪性腫瘍が次々と転移する病気です。新婚半年の07年3月に病気が分かりましたが、既に左脇のリンパ節に転移し、末期でした。再発を繰り返し、昨年10月に医師から「1カ月も持たない」と言われてもインターネットの会員制サイトで「闘病日記」をつづり続けました。
<幸せとは、今この瞬間に感じるもの。未来に求めるものではない><私を支えてくれているすべての人のために、残りの人生をささげたい>
命と向き合い、発し続けた言葉は、さまざまな困難を抱える多くの人を勇気づけました。その絆を力に、千佳世さんも幾多の難局を乗り越えました。
毎日新聞では1月から、千佳世さんと周囲の人たちの姿を伝える「千佳世は生きる」を連載しています。編集局に届いたメッセージは100件を超え、千佳世さんは一通一通に目を通し「また力が湧いた」と涙を流していました。
夫の誠さん(31)によると、今月3日、右肺に続き左肺にも胸水がたまり始めて入院し、9日に容体が急変。あおむけに寝るだけで呼吸ができない苦しい状況でも、一睡もせず治療に臨みました。12日に意識が遠くなってからも、誠さんが「千佳世は生きるよな」と語りかけると「うんうん」と小さく応え続けました。午後9時9分、家族が見守る中、穏やかな表情のまま静かに息を引き取ったそうです。
次回の「千佳世は生きる」は4月8日に掲載します。ご冥福をお祈りします。【山田泰蔵】
現代の「メメント・モリ」 Dr.中川のがんから死生をみつめる/98
2011年3月13日 提供:毎日新聞社
Dr.中川のがんから死生をみつめる:/98 現代の「メメント・モリ」
核家族化や病院死によって、老いや死が直接目に触れない「不可視化」が進んだ現代、私たち日本人は、「死なないつもり」で生きているかのようです。
一方で、伊勢物語の主人公とされ、平安時代きっての“プレーボーイ”と称された在原業平は「つひに行く道とはかねて聞きしかど 昨日今日とは思はざりしを」と歌っています。「いつかは死ぬとは分かっていたけれど、こんなにすぐとは思っていなかった」という意味です。これは、まさに現代の日本人の感覚そのものではないでしょうか。
日本人の死生観は変容してしまったのか、それとも、案外変わっていないのか? この問いに答えることは簡単ではありません。たしかに、方丈記や徒然草では、現代人が忘れてしまった「諸行無常」が、繰り返し説かれています。しかし、鴨長明や吉田兼好は、「死生観の達人」といえます。当時の一般の人たちは何も書き記していませんから、彼らがどんな思いで生き、死んでいったかは知るよしもありません。
しかし、長明や兼好が生きた鎌倉時代、路傍には死体がありました。死が「隠蔽(いんぺい)される」現代との大きな違いです。万人が「死生」に思いを巡らせていた時代だったはずです。
その点、半数が治るといっても、なお「死の病」のイメージが強い「がん」は、現代の「メメント・モリ」(ラテン語で「死を思え」)です。死を意識せざるをえない、がんの患者の死生観を探れば、日本人の死生観の源流にさかのぼれるのではないか? そんな思いから、がん患者と一般の人の「死生観」を調査した研究結果について、次に詳しくご紹介したいと思います。(中川恵一・東京大病院准教授、緩和ケア診療部長)
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このコラムは4月から、「Dr.中川のがんの時代を暮らす」にリニューアルします。中川恵一さんが引き続き執筆し、国民病とも言われるがんと向き合う暮らし方を解説します。読者からの質問にも随時答えます。質問はメール(kenko@mainichi.co.jp)かファクス(03・3215・3123)へ。なお、個別の病状の相談や質問全てにはお答えできませんので、ご了承ください。